2026年10月5日から10月11日までにSK進路で公開した記事から、教員の復職、勤務継続、異動、離職、転職と、メンタル不調後の就労支援に関する16本をまとめます。
今週は、那覇市のオンライン復職支援、大阪府の教職復帰プログラム、滋賀県の不当要求への組織対応、英国の学校監査、アイルランドの追加勤務停止、米国・豪州の離職要因、国内外の復職・就労支援事例を確認しました。制度、調査、個人事例を分け、数値の対象範囲と確認できていない成果も併記します。
那覇市は、休職中から復職後を見据えたオンライン支援を開始
那覇市教育委員会は、2026年9月1日から2027年3月31日まで、休職・復職期の教職員と教育委員会職員を対象に、オンラインのリワークと休復職管理システムを導入しました。運営事業者による発表では、公認心理師や精神保健福祉士などの専門職が休職中に月1回以上連絡し、本人は睡眠や疲労度などをスマートフォンで記録します。蓄積した情報は、産業保健スタッフや教育委員会が復職時期や受け入れ体制を検討する際に使うとされています。

オンラインリワークでは、不調要因の分析、ストレス対処、認知行動療法などを段階的に扱います。事業者は、2024年10月から2026年5月までのサービス全体で復職6か月後の定着率を約85%、利用者満足度を約96%と公表しています。ただし、これは那覇市教職員だけの実績ではなく、比較対照を置いた独立評価でもありません。今回の委託事業そのものの結果は、まだ確認できません。
大阪府は、教職を離れていた人向けに講座と個別相談を実施
大阪府教育委員会は、2026年11月3日に「教員スタートアッププログラム」第3回を開催します。対象には、教員免許を持つ未経験者、長期間教職を離れていた人、中学校・高校の免許を持ち小学校勤務を検討する人などが含まれます。学校で働くための基本講座、現職教員の動画、講師登録制度と処遇の説明、教育委員会による個別相談が予定されています。
会場は大阪学院大学で、定員は100人、申込締切は11月2日18時です。プログラムへの参加や講師登録は採用を保証するものではなく、必要な免許、募集状況、勤務条件は別に確認する必要があります。また、メンタル不調経験者に特化した医療・復職支援ではありません。
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復職では、本人の状態だけでなく職場との調整事項も扱う
カナダ・ケベック州の査読誌に掲載された事例研究では、適応障害で休職した看護師に対し、2人の復職コーディネーターが支援しました。標準化尺度で復職の障壁と自己効力感を確認し、心理教育、再発予防計画、上司との面談準備を進め、段階的な復職開始後も状況に合わせて支援内容を調整しています。
確認できるのは、復職の障壁を整理して段階的な職場再統合を支えた一事例までです。復職後の勤務時間、配置、仕事内容、何か月継続したかは公開情報から確認できません。また、対象は看護師であり、教員を対象とした研究ではありません。
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SK進路では今週、復職可否の医学的判断とは別に、休職期限、業務量、勤務時間、配置、生活費、家族への影響などを同じ表で確認する整理記事も公開しました。これは制度の効果検証ではなく、判断材料を整理するためのSK進路の記事です。
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滋賀県は、教員個人ではなく組織で不当要求へ対応
滋賀県教育委員会は2026年10月1日、「県立学校における過剰な苦情・不当な要求等の防止等に関する指針」を策定しました。同日施行の改正労働施策総合推進法により、事業主へカスタマーハラスメント防止措置が義務化されたことを受けた対応です。
指針では、保護者や地域住民などからの言動であること、社会通念上許容される範囲を超えること、教職員の勤務環境などが害されることの三つを要件としています。該当する場合は学校が組織的に対応し、特に悪質な場合は警察へ通報します。相談窓口、教職員研修、保護者・地域住民への周知も盛り込まれました。
正当な要望や意見を拒む指針ではありません。学校側が十分に説明することを前提に、暴行、脅迫、中傷、威圧、執拗な連絡、不退去などを個人対応から組織対応へ移すものです。
英国の学校監査では、回答校の48%が精神的な悪影響を報告
英国の教育監査機関Ofstedは2026年10月9日、新しい教育監査制度の中間評価を公表しました。独立調査機関IFF Researchが、新制度導入後に監査を受けた教育機関から699件の回答を集め、そのうち学校は253件でした。
教育機関全体では39%、学校に限ると48%が、監査によって回答者本人または参加職員の精神的な健康に「相当程度」または「大きな」悪影響があったと回答しました。学校の50%は監査による業務負担を管理可能な範囲だったという見方に否定的で、42%は従来制度より業務負担が悪化したと答えました。
一方、教育機関全体の88%は監査が敬意を持って実施された、76%は協力的だった、78%は共感的だったと回答しています。監査担当者の対応改善と、監査に伴う業務・精神負担は分けて見る必要があります。学校の回答率は23%で、回答校がイングランド全体を代表するとは限りません。離職率や休職率への影響を測った調査でもありません。
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アイルランドでは、授業を続けながら追加勤務への協力を停止
アイルランド中等教員組合ASTIは、最大2万人の中等教員が2026年10月5日から争議行為を始めたと発表しました。通常の授業は続ける一方、労使協定に基づく追加勤務など一部業務への協力を停止しています。
組合員投票では95%が争議行為に賛成し、投票率は56%でした。小学校教員の組合も同様の対応を始めています。これは教員が自由に勤務時間を短縮できる制度ではなく、給与と物価上昇をめぐる労使交渉の一環です。アイルランドの争議行為を日本の教員制度へそのまま当てはめることはできませんが、授業と追加業務を区別して交渉している事例です。
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離職理由は、給与だけでなく生徒指導・業務量・準備時間にも分かれる
米ネバダ州チャーチル郡学区の2025-26年度離職・異動調査では、15人が回答し、回答率は75%でした。自由記述の分析では、生徒の行動、規律、教室の安全が最も多く、次に業務量への期待と授業準備時間の不足が挙げられました。同僚や管理職との良好な関係は「残る理由」としても確認されています。
これは一学区の小規模調査であり、米国の教員全体へ一般化できません。また、離職者と異動者が対象で、在職者全体の離職率を示すものでもありません。
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豪州の教員 workforce data では、離職を考える教員のうち、生徒の行動を理由に挙げた割合が2020年の25%から2024年には47%へ上昇しました。別の中堅教員研究は、2019〜2024年の3調査、計1万6,000人超を分析し、「退職まで教員を続ける」と答えた中堅教員は30%、最大の離職理由は業務量だったと報告しています。
個別事例では、メルボルンの高校で33年間イタリア語を教えた教員が、勤務校の3キャンパス化に伴う移動、担当変更、業務量、生徒行動などを背景に退職し、不動産テクノロジー企業へ移りました。教員時代の営業、コンテンツ制作、マネジメントなどの能力を転職先で使っていると報じられています。これは一人の事例であり、すべての教員に同じ転職経路が成立することを示すものではありません。
メンタル不調後の進路は、元の職場への復帰だけではない
今週確認した国内外の個人事例では、メンタル不調後の進路に複数の経路がありました。
- 日本では、50代女性が約2年間の就労移行支援を利用し、特別支援小学校の障害児支援職へ再就職しました。就職2年目に双極症を職場へ開示し、2026年9月時点で就職から約3年が経過していました。事業者が公開した利用者インタビューであり、第三者による効果検証ではありません。関連記事:50代女性、就労支援2年で「病気を隠さない働き方」へ-日本-
- カナダでは、うつ病などを経験した移民女性が就労支援で複数の職種を比較し、友人から得た地域情報をもとに北部へ移住して、小売店の仕事と別のパート勤務を得ました。勤務時間、収入、継続期間、症状の変化は未確認です。関連記事:うつ病経験の女性、求人を比較し北部へ移住・仕事2つ-カナダ-
- 北アイルランドでは、メンタルヘルス上の困難を抱える一人親の女性が、資格取得、6週間のキャリア準備、8週間の起業基礎講座を経てスキンケア事業を立ち上げました。確認できるのは事業開始と追加講座への採用までで、売上、利益、顧客数、現在の営業状況は未確認です。関連記事:メンタル不調後、就労支援から化粧品事業を起業-英国-
- ニュージーランドの支援団体が公開した事例では、メンタルヘルス上の大きな困難を経験した女性が、以前から希望していた英国のワイナリーでの仕事を得ました。支援者が意思決定や求人探索へ具体的にどう関与したかは公開されていません。関連記事:メンタル不調後、夢だった海外ワイナリー就職へ-NZ-
- 米国の本人寄稿では、解雇後に不安・抑うつなどを経験した30代女性が、キャリアコーチを利用し、実家への転居とパート勤務を経て、以前の仕事に似た求人を複数断り、約2年後に別のフルタイム職を選びました。就職をコーチング単独の成果と判断することはできません。関連記事:不安・抑うつ後、コーチ利用し別の仕事へ-米国-
これらは、国、制度、対象者、支援期間、健康状態が異なる個人事例です。成功率として合算したり、日本の教員が同じ結果を得られる根拠として使ったりはできません。
今週の比較記事は、負担を5つの層に分けた
SK進路では今週、既存の教員向け5事例を、心身と安全、学校環境、役割と仕事量、勤務条件、教職そのものの五つに分けて確認する記事を公開しました。合計点で退職・復職を決めるものではなく、どの条件を先に確認するかを整理するためのSK進路側の枠組みです。
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今週確認できたこと
今週の制度・調査では、教員の復職や継続を本人の回復・意欲だけで捉えず、復職後の受け入れ体制、不当要求への組織対応、学校監査、追加勤務、準備時間、生徒指導、管理職との関係まで勤務条件として扱う動きが確認できました。
一方、個人事例は制度全体の効果を証明するものではありません。海外の制度、争議行為、離職要因を日本へそのまま一般化することもできません。復職・継続・異動・退職・転職を検討するときは、医療上の安全確認、利用できる制度、勤務先で実際に変えられる条件、生活費と期限を分けて確認する必要があります。


