復職後、「以前のようにはやっぱり働けない」とならないために、復職前に整理したい5つのこと

休職中は、「復職できるかどうか」が一番の問題に見えてきます。

朝、決まった時間に起きられるか。
通勤できるか。
一日、職場にいられるか。
以前と同じ仕事ができるか。

会社との面談でも、主治医への相談でも、「いつから戻れるか」「どの程度まで回復しているか」という話が中心になりがちです。

しかし、復職できることと、その後も仕事を続けられることは同じではありません。

復職直後は、緊張感で乗り切れるかもしれません。周囲も気にかけてくれるでしょう。仕事量も一時的に調整されるかもしれません。

本当の問題は、復職が特別な出来事ではなく、再び日常になってからです。

仕事が思うように進まない。
以前ならできていたことに時間がかかる。
周囲の言葉が必要以上に気になる。
休日まで仕事について考え続けてしまう。

そのとき、

「休んだのに、結局何も変わっていない」
「やっぱり以前のようには働けない」
「復職しない方がよかったのではないか」

という考えが出てきます。

この状態を避けるために必要なのは、休職前の自分へ戻る準備ではありません。

休職に至るまでの出来事を整理し、仕事から離れる方法を持ち、職場と生活の現実を把握したうえで、これから何を目指すのかを考えることです。

復職前に、少なくとも次の5つを整理しておく必要があります。

  1. 頭の中の調整
  2. 休日の現実との切断
  3. 働き場の全体把握
  4. 金銭的状況把握
  5. 目指すべき先

これは、何があっても復職するための準備ではありません。

復職するのか、退職するのか、それとも別の働き方を選ぶのか。その判断を、目の前の不安だけに流されずに行うための整理です。

※この記事は、医学的な復職可否を判断するものではありません。治療や安全に関する判断は、主治医や医療機関への相談を優先してください。


目次

1 頭の中の調整

頭の中の思考を自分ノートに書き出し、五つに整理するイメージ

休職によって、身体を仕事から離すことはできます。

しかし、頭の中まで自動的に仕事から離れられるわけではありません。

休職前に言われた言葉。
納得できなかった対応。
断れないまま引き受けた仕事。
自分にも原因があったのではないかという思い。
復職したら周囲からどう見られるのかという不安。

こうしたものは、時間がたてば自然に消えるとは限りません。

考えないようにしていても、頭の中では同じ場面が何度も繰り返されています。

この状態で復職すると、目の前で起きた小さな失敗と、休職前の出来事が結びつきます。

仕事が少し遅れただけなのに、

「やはり自分には働く能力がない」
「また同じことが始まった」
「周囲も自分を使えないと思っている」

と、考えが一気に広がってしまいます。

目の前の出来事だけでなく、頭の中に残っていた過去まで一緒に引きずり出されるからです。

そこで必要になるのが、自分ノートです。

自分ノートは、きれいな文章を書くための日記ではありません。

頭の中にたまっているものを外へ出し、思考を調整するための場所です。

例えば、次のように分けて書きます。

  • 実際に起きたこと
  • そのとき自分が考えたこと
  • 本当は何が嫌だったのか
  • 今も何を怖いと感じているのか
  • 自分が引き受けすぎていたこと
  • 復職後に繰り返したくないこと
  • 会社や周囲に確認する必要があること

頭の中だけで考えていると、事実、想像、怒り、不安、自己否定が一つの塊になります。

書き出せば、

「これは実際に起きたこと」
「これは自分の予想」
「これはまだ残っている怒り」
「これは会社に確認しなければ分からないこと」

と分けられるようになります。

頭の中の調整とは、無理に前向きになることでも、嫌だったことを許すことでもありません。

抱えているものをいったん外へ出し、復職後に持っていくものと、持っていかなくてよいものを分けることです。

自分の中で思考を調整し、排出できないまま復職すると、仕事がうまくいかなかったときに、休職前から抱えていたものまで引きずることになります。

復職後に持っていくべきなのは、休職前の苦しさそのものではありません。

そこから分かった、自分を守るための条件です。


2 休日の現実との切断

仕事から離れ、ひとり旅でオンとオフを切り替えるイメージ

仕事を続けていくためには、仕事に向かう力だけでなく、仕事から離れる力が必要です。

オンとオフがあるから、次の勤務日に向かえます。

ところが休職中は、仕事をしていないにもかかわらず、頭の中ではずっと仕事をしていることがあります。

生活リズムを整えなければならない。
復職できる状態にならなければならない。
仕事に関する勉強をしておかなければならない。
会社との面談に備えなければならない。

身体は職場から離れていても、意識は仕事や復職の問題につながったままです。

この状態のまま復職すれば、休日も仕事から離れられません。

金曜日の失敗を土曜日まで考え、日曜日になると月曜日の不安が始まる。

休んでいるはずなのに、気持ちが仕事へ引き戻される。

これでは、休日が回復の時間になりません。

だから必要になるのが、休日に現実からいったん切断される時間です。

現実との切断とは、問題から逃げることではありません。

仕事、家庭、治療、復職準備など、普段の生活で背負っている役割から、一定時間離れることです。

その方法として勧めたいのが、ひとり旅です。

遠くへ行く必要も、高額な旅行をする必要もありません。

普段使わない電車に乗る。
知らない町を歩く。
仕事とは関係のない景色を見る。
食べたいものを自分で決める。
疲れたら、自分の判断で休む。

場所を変えると、普段の生活の中では切れなかった思考が、いったん途切れます。

仕事をしている自分でも、休職している自分でも、誰かに期待されている自分でもない時間を持つことができます。

ひとり旅を勧めるのは、旅行そのものが問題を解決してくれるからではありません。

自分で行き先を決め、自分の感覚で動き、自分のために時間を使う経験が、日常から意識を切り離す練習になるからです。

ずっと立ったままでは、高く跳ぶことはできません。

一度しゃがむから、次にジャンプできます。

仕事を続けることも同じです。

働き続ける人は、休まずに頑張り続けているのではありません。仕事から離れ、回復し、再び戻ることを繰り返しています。

仕事を続ける力とは、頑張り続ける力だけではありません。

必要なときに現実から離れ、また戻ってこられる力です。

復職前に、自分は何をすれば仕事から切り離されるのかを知っておく。

ひとり旅は、その方法を見つけるための一つの入口になります。


3 働き場の全体把握

会社・上司・従業員・顧客の関係を全体から捉えるイメージ

復職を考えるとき、「自分が働ける状態になったか」だけに目が向きやすくなります。

しかし、休職に至った原因は、本当に自分の状態だけにあったのでしょうか。

仕事量が多すぎたのか。
役割と能力が合っていなかったのか。
特定の人との関係だったのか。
責任だけが増え、必要な権限がなかったのか。
困っていることを相談できる仕組みがなかったのか。
自分が断れず、仕事を引き受け続けていたのか。

原因を「自分のメンタルが弱かった」で終わらせれば、職場側に残っている問題が見えなくなります。

反対に、すべてを職場のせいにすれば、自分が変えられる部分や、次の職場でも繰り返す可能性のある行動が見えなくなります。

必要なのは、どちらか一方を悪者にすることではありません。

働き場の全体を、できるだけ客観的に把握することです。

会社という組織には、会社としての目的があります。

経営者には、事業を続ける責任があります。
上司には、部署の成果や人員を管理する責任があります。
同僚には、自分の仕事量や評価、生活があります。
顧客や利用者には、会社や従業員に求めているものがあります。
そして自分にも、収入、健康、生活、将来があります。

同じ職場にいても、それぞれ見ているものは違います。

会社にとって都合のよいことが、必ずしも自分にとってよいとは限りません。

同僚が強く主張していることが、会社全体の考えとも限りません。

直属の上司が口頭で言ったことが、制度上の決定とは限りません。

その全体を見ないまま復職すると、その場で最も強く聞こえる声に流されます。

「みんな大変なのだから」
「今だけ手伝ってほしい」
「以前はできていたのだから」
「これくらいは任せたい」

そう言われるたびに、自分の状態や復職時の条件よりも、目の前の相手の都合を優先してしまいます。

復職前に確認したいのは、次のようなことです。

  • 休職に至った直接的な原因は何だったのか
  • その原因は、現在も職場に残っているのか
  • 復職後に変わることと、変わらないことは何か
  • 業務量や担当範囲を決めるのは誰か
  • 困ったときに相談する相手は誰か
  • 状態が悪くなったとき、どのような調整ができるのか
  • 自分は何を引き受け、何を引き受けないのか

客観的に把握するとは、感情をなくすことではありません。

それぞれの立場と、その立場から生まれる思惑を分けて見ることです。

働き場の全体が見えていなければ、復職後も表面的な声の大きさに流されます。

全体が見えていれば、「相手が強く言っていること」と「自分が従う必要のあること」を分けて考えられるようになります。


4 金銭的状況把握

退職後の収入と生活費を整理する家計のイメージ

退職の手続きだけを見れば、それほど複雑ではありません。

退職の意思を伝え、退職日を決め、必要な書類を提出する。

仕事や人間関係が苦しいとき、退職は、現在の状況を変える最も分かりやすい方法に見えます。

しかし、退職日を迎えた瞬間に失うのは、嫌だった仕事だけではありません。

それまで生活を支えていた、定期的な収入源もなくなります。

毎月入っていた給与が止まれば、家賃も、食費も、光熱費も、医療費も、別のところから支払わなければなりません。

貯蓄を使うのか。
利用できる制度を確認するのか。
家族に支えてもらうのか。
次の仕事を急いで探すのか。

自分の収入で生活を維持できなくなれば、誰かに支えてもらう必要が出てくる場合もあります。

支えてもらうこと自体が悪いわけではありません。

ただし、誰が、どの程度、いつまで支えられるのかを確認しないまま退職すれば、あとになって選択肢を失うことがあります。

退職前に確認したいのは、貯金額だけではありません。

  • 毎月、生活に最低限いくら必要なのか
  • 給与が止まった場合、何か月生活できるのか
  • 退職後に自分で負担する税金や社会保険料はいくらか
  • 利用できる可能性のある給付や制度はあるか
  • 家族から支援を受ける場合、金額と期間はどの程度か
  • 次の収入を得るまでに、どのくらいの時間が必要か
  • 収入が減った状態で、治療や生活を続けられるか

復職する場合も同じです。

短時間勤務や業務変更によって収入が減るのであれば、その金額で生活を維持できるのかを確認しなければなりません。

金銭的状況を把握することは、退職を諦めるためではありません。

お金が不安だから、無条件で復職するためでもありません。

自分には、どの選択肢を、どれくらいの期間選べるのか。

その現実を知るためです。

退職は、会社を離れる手続きです。

しかし、その後も自分の生活は続きます。

会社を辞める判断と、その後の生活を維持する準備は、必ず一緒に考える必要があります。


5 目指すべき先

今の仕事を土台に二つの目指す先へ進むイメージ

仕事には、社会の一部として役割を担い、その対価として生活を支える報酬を得る目的があります。

誰かに必要とされる仕事をし、その対価として収入を得る。

それだけでも、仕事をする十分な理由です。

仕事に壮大な夢や自己実現を求めなければならないわけではありません。

しかし、復職後も今の仕事を続けるのであれば、もう一つ確認しておきたいことがあります。

今の仕事を続けることで、成し得たいことがあるのか。

または、今の仕事を続けながら、成し得たいことがあるのか。

この二つは似ていますが、意味が違います。

一つ目は、今の仕事そのものの中に目指すものがある場合です。

身につけたい技術がある。
関わりたい仕事がある。
今の立場だからできることがある。
誰かの役に立ちたい。
将来、担いたい役割がある。

この場合、今の仕事は、目指す先へ直接つながっています。

二つ目は、今の仕事を生活の土台として使いながら、仕事以外のものを目指す場合です。

今の仕事で生活費を得ながら、学び直す。
家族との生活を守る。
資格を取得する。
別の活動を育てる。
将来やりたい仕事への準備をする。

この場合、今の仕事は最終目的ではなく、別のものを成し得るための土台です。

どちらが正しいということではありません。

大切なのは、自分が今の仕事を続ける理由を、自分で理解していることです。

「元の職場に戻ること」だけを目標にすると、復職した時点で目標がなくなります。

その後に苦しいことが起きたとき、何のために続けているのか分からなくなり、ただ耐えるだけになってしまいます。

今の仕事そのものの中で目指すのか。
今の仕事を続けながら、別のものを目指すのか。
今の職場を一時的な土台として、次の働き方へ移る準備をするのか。

復職前に、人生の最終的な答えを出す必要はありません。

ただし、復職した先に何を置くのかは考えておく必要があります。

目指す先が分かっていれば、今の仕事で受け入れるものと、受け入れる必要のないものも見えやすくなります。

仕事を続けること自体が目的なのではありません。

仕事を続けることによって、自分は何を支え、何を成し得たいのか。

それが、復職後の判断を支える基準になります。


復職することを、ゴールにしない

復職前には、「職場へ戻れるか」が大きな問題になります。

しかし、本当に考えなければならないのは、戻ったあとに、その仕事と生活を続けられるかどうかです。

  • 頭の中に残っているものを、自分ノートに出す
  • ひとり旅などを通して、仕事から切断される時間を持つ
  • 職場にいる人たちの立場と、それぞれの思惑を客観的に見る
  • 退職や収入減少の先にある生活を、数字で確認する
  • 今の仕事を通して、または今の仕事を続けながら、何を成し得たいのかを考える

この5つを整理したからといって、復職後の問題がすべてなくなるわけではありません。

それでも、何かがうまくいかなかったときに、すぐに「自分は働けない」という結論へ進むことは減らせます。

問題が自分の状態にあるのか。
職場の条件にあるのか。
休み方にあるのか。
生活を支えるお金にあるのか。
目指す先を見失っているのか。

立ち止まって、分けて考えられるようになるからです。

復職とは、休職前の状態へそのまま戻ることではありません。

休職を経た自分が、これから仕事と生活をどのように組み直すのかを考える入口です。

復職するか、退職するか、別の働き方を選ぶかについて、まだ整理できていない方は、次の記事から読んでください。

→ 休職後、復職か退職かで迷うとき|仕事と生活を決める前に整理したいこと

一方で、

  • 会社へ返事をする期限が迫っている
  • 考えるたびに結論が変わる
  • 家族や会社へ、自分の考えを説明できない
  • 自分ノートに書いても、何を基準に決めればよいか分からない
  • 復職と退職以外の選択肢も含めて整理したい

という方は、情報を増やすだけでは決め切れない場合があります。

誰かに答えを決めてもらうのではなく、自分の状況、職場、お金、今後の目標を一緒に並べ、自分で判断できるところまで整理する必要があります。

今すぐ誰かと一緒に選択肢を整理する必要がある方は、こちらをご確認ください。

→ 復職・退職以外の選択肢も含めて考える

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