休職して少し時間がたつと、次のことを考え始めます。
復職するのか。
このまま退職するのか。
別の仕事を探すのか。
周囲から「そろそろどうするの?」と聞かれることもあります。
けれど、自分の中ではまだ答えが出ていない。
朝は「戻れるかもしれない」と思っても、午後になると、職場に戻る場面を考えただけで重くなる。退職を考えると少し楽になる一方で、収入や家族、この先の仕事が不安になる。
復職にも不安がある。
退職にも不安がある。
その状態で「どちらかを選ばなければ」と考え続けると、頭の中を同じ考えが回り始めます。
この記事では、復職と退職のどちらが正しいかを決めません。
いま何が決まっていて、何がまだ分からないのか。仕事だけでなく、体調、生活、家族、収入まで含めて、判断材料を一度並べ直します。
※この記事は、医学的な復職可否や法律・制度上の判断を行うものではありません。治療や安全確保が必要な状態では、主治医や医療機関への相談を優先してください。
今すぐ支援が必要な方へ
いま、自分の安全を保つことが難しい、「死にたい」「消えたい」という気持ちが強い、自分を傷つけるおそれがある場合は、この記事で進路を考えるより先に、主治医、医療機関、身近な人へ連絡してください。
命や身体に差し迫った危険がある場合は、119番へ連絡してください。相談先が分からない場合は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、電話やSNSの相談窓口を確認できます。
最初に確認したいのは、「いま決める時期なのか」
復職するか退職するかを考える前に、最初に確認したいことがあります。
それは、いまが大きな決断をする時期なのか、ということです。
休職した直後や、まだ体調の波が大きい時期には、昨日と今日で考えが変わることがあります。
仕事から離れた直後は「もう二度と戻りたくない」と思っていても、少し休んだあとには別の見方ができるかもしれません。
反対に、調子のよい一日だけを見て「もう戻れる」と判断しても、通勤や勤務が始まると想像以上に負担がかかることがあります。
だから、いま無理に結論を出すのではなく、まず次の点を確認します。
- 主治医から、仕事や今後について考えてよい状態だと言われているか
- 睡眠や食事、日中の生活がある程度安定しているか
- 数日ではなく、少し長い単位で体調を見られているか
- 休職期間や手続き上の期限を把握しているか
- 自分だけで決めず、確認できる相手や窓口があるか
復職の手続きや判断の流れは、勤務先の就業規則によって異なります。厚生労働省も、休業から通常業務への復帰までの流れを明確にし、主治医の判断、職場側の判断、復職支援計画、復職後のフォローを段階として扱っています。
参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
まだ考えられる状態ではないなら、「いまは決めない」ことも判断の一つです。
ただし、その場合も放置するのではなく、「いつ、何を確認して、もう一度考えるか」まで決めておきます。
復職か退職かの二択にすると、どちらも怖くなる
復職を考えると、同じことが起きるのではないかと不安になる。
退職を考えると、収入や次の仕事が不安になる。
これは、どちらかに覚悟が決まっていないからではありません。復職にも退職にも、得るものと失うものがあるからです。
復職には、収入や雇用を維持できる可能性があります。慣れた仕事や人間関係に戻れる場合もあります。
一方で、休職前と同じ業務、同じ時間、同じ人間関係に戻るのであれば、「また同じことにならないか」という不安は残ります。
退職すれば、現在の職場から離れられます。ただ、退職した瞬間に次の方向が決まるわけではありません。収入、社会保険、家族への説明、再就職など、新しく考えることも出てきます。
どちらにも現実があります。
そのため、「戻るか、辞めるか」だけで考えるのではなく、間にある選択肢も並べます。

実際の選択肢は、二つだけではない
状況によって異なりますが、たとえば次のような選択肢があります。
- 元の職場、元の業務へ復職する
- 業務量や勤務時間を調整して復職する
- 配置や役割の変更について相談する
- 異動の可能性を確認する
- 休職期間を延長できるか確認する
- 条件を決めて、いったん復職してみる
- 退職して休養期間を確保する
- 退職後に転職活動を始める
- 休職中に、転職市場や別の働き方を調べる
- 期限を決めて判断を保留する
ここで大切なのは、すべてを選ぶことではありません。
「自分には関係ない」と思っていたものも一度並べ、利用できるかどうかを確認してから外すことです。
つまり、様々な選択肢をテーブルの上に置くのです。
異動は難しいと思っていたが、制度上は相談できるかもしれない。短時間勤務はないと思っていたが、復職支援の中で調整できるかもしれない。
反対に、あると思っていた制度が、自分の勤務先では利用できないこともあります。
頭の中だけで可能性を消さず、就業規則、人事・労務担当者、産業医などに確認していきます。
休職制度や復職の手続きは勤務先によって異なります。制度上の判断が必要な場合は、勤務先の規程や専門窓口を確認してください。
頭の中にあるものを、3つに分けて書く
ここからは、紙かスマートフォンのメモを使います。
いま考えていることを、次の三つに分けて整理します。

1.すでに確認できている事実
例:
- 休職できるのは〇月〇日まで
- 復職には主治医の診断書が必要
- 現在の給与は月〇円
- 家族は復職を求めているか
- 異動についてはまだ相談していない
2.まだ確認できていないこと
例:
- 復職後に業務量を減らせるか
- 元の場所以外に戻れる可能性があるか
- 退職した場合、当面の生活費を何か月分確保できるか
- 傷病手当金や失業給付がどうなるか
- 自分の経験を生かせる仕事がおもいつくか
3.自分が怖いと感じていること
例:
- また体調を崩すこと
- 周囲に迷惑をかけること
- 辞めたことを後悔すること
- 次の仕事が見つからないこと
- 家族を不安にさせること
- 今まで積み上げてきたものがなくなること
事実と、未確認のことと、怖さ。
この三つを同じものとして扱うと、何から手をつければよいか分からなくなります。
分けてみると、「いま決めること」より先に、「会社に確認すること」「専門窓口で調べること」「家族と話すこと」が見つかる場合があります。
仕事だけを見て決めない
復職か退職かを考えるとき、勤務先のことだけを比べてしまいがちです。
しかし、実際の判断には、仕事以外の条件も関係します。

体調
- 朝から夕方まで活動できるか
- 通勤を含めた生活を続けられそうか
- 体調が悪くなったとき、自分で気づけるか
- 不調時に休む、相談するなどの対応ができるか
職場
- 休職前に何が負担になっていたか
- その負担は、復職後に変えられるか
- 業務量、勤務時間、配置、人間関係を調整できるか
- 困ったときの相談先があるか
生活
- 睡眠、食事、家事を含めて生活を維持できるか
- 復職準備にどの程度の時間が必要か
- 通勤による負担はどのくらいか
家族
- 家族が心配しているのは何か
- 家族にどこまで説明できているか
- 家事、育児、介護などの負担を調整できるか
収入
- 復職した場合の収入
- 退職した場合に使える制度
- 毎月必要な生活費
- 収入が減っても生活できる期間
- 転職活動や学び直しに使える費用
将来
- 元の働き方を続けたいのか
- やりたいことはなにか
- 仕事内容は続けたいが、環境を変えたいのか
- 今回だけでなく、数年後も続けられる働き方か
- もう同じ迷い方を繰り返したくないと思っているか
仕事だけなら復職がよく見えても、生活まで含めると条件の調整が必要かもしれません。
反対に、不安だけを見ると退職しかないように思えても、職場で変えられる条件が残っている場合もあります。
選択肢を同じ条件で比べてみる
次の表を使って、復職、退職、異動、転職などを同じ条件で比べます。
| 確認すること | 復職 | 条件を変えて復職 | 退職 | 転職・別の働き方 |
|---|---|---|---|---|
| 心身への負担 | ||||
| 毎月の収入 | ||||
| 生活への影響 | ||||
| 家族への影響 | ||||
| 必要な準備 | ||||
| 利用できる制度 | ||||
| 身につけるべきスキル | ||||
| 心配なこと |
すべての欄を埋める必要はありません。
空欄が残ったら、それが「次に調べること」です。
「復職する」と決める前に、困らない準備をする
復職を第一候補にする場合も、「とにかく戻る」だけでは不十分です。
次の条件を考えます。
- どの状態になったら復職を進めるのか
- 業務量や勤務時間について何を確認するのか
- 休職前の負担のうち、何が変わる必要があるのか
- 誰に、どの段階で相談するのか
- どのような状態になったら立ち止まるのか
- 復職後、いつ振り返るのか
復職は、休職前の自分にそのまま戻ることとは限りません。
同じ職場に戻るとしても、働き方や役割、周囲との関わり方を見直すことはできます。
「退職する」と決める前に、退職後の時間の活用を想定する
退職を第一候補にする場合は、辞める手続きだけでなく、その後の時間も見ます。
- 退職後、すぐに働くのか
- しばらく休むのか
- 生活費を何か月分確保できるか
- 転職活動を始める時期
- 社会保険や給付について確認すること
- 家族への説明
- 退職後に一人で抱え込まないための相談先
- 次の仕事で繰り返したくない条件
辞めれば、現在の職場との問題は一区切りになります。
しかし、「次はどこで働くか」だけを急いで決めると、休職前と似た条件の職場を選んでしまうことがあります。
退職後の仕事探しより前に、何が自分を苦しくさせていたのか、次の働き方では何を変えたいのかを言葉にしておく必要があります。
今、結論を出さなくていい
ここまで読んでも、復職か退職かを決められないかもしれません。
今日決めることは、最終的な進路ではなくてもよいからです。
たとえば、
- 就業規則で休職期限を確認する
- 人事担当に、復職時の配慮について聞く
- 毎月の生活費を確認する
- 復職、退職以外の選択肢を調べる
これも前進となります。
人生の答えを一度で出すのではなく、いま確認できることを確認し、選択肢を同じ条件で比べ、次の判断につなげていく。
SK進路では、このように仕事と生活の材料を並べ直し、自分で選べる状態をつくることを「進路設計」と呼んでいます。
「やりたいことが分からない」という感覚も重なっている方は、こちらの記事も続けて読んでみてください。
メンタル不調を経験した教員の方で、3か月以内に具体的な進路判断が必要で、自分だけでは期限までに決め切れない場合は、SK進路の進路設計プロジェクトも確認してください。

