メンタルヘルス上の困難から孤立し、意欲を失っていた19歳の若者が、就労・学習支援を利用し、「不動産業界で働きたい」という希望を実際の仕事につなげた事例がオーストラリアで公開された。
2026年8月26日、南オーストラリア州でheadspaceのサービスを提供するSonderが、利用者Louisの事例を掲載した。本人名はプライバシー保護のため変更されている。これは事業者が掲載した利用事例であり、第三者による効果検証ではない。Sonder
Louisは当時19歳。成人学生としてSACE(南オーストラリア州の中等教育修了資格)取得に取り組んでいたが、自信と意欲の低下を抱えていた。本人は当時について、孤立し、人との関わりを避け、ほとんど意欲がなかったと振り返っている。Sonder
一方、「何をしたいか」はすでにあった。
Louisが望んでいたのは不動産業界で働くことだった。本人にとって不動産は「dream job」だったが、業界へどう入ればよいのか分からず、希望を実際の進路へ変える段階で止まっていた。Sonder
そこで利用したのが、headspace Work & Studyである。
このサービスは、メンタルヘルス上の困難を抱えながら、仕事・教育・職業訓練上の目標を持つ若者を対象にした就労・学習支援である。オーストラリア政府の社会サービス省によると、対面型では12~25歳の若者を対象に、Work & Study specialistが本人のメンタルヘルス支援者とも連携しながら、仕事探し、応募、面接準備、学習先の検討、新しい仕事や訓練への移行などを1対1で支援する。Department of Social Services
LouisにはEmployment SpecialistのRoseが担当した。
二人はまず、「不動産業界へ入りたい」という希望を具体的な計画へ変えていった。面接準備、不動産業界で得られる機会の探索、研修費用、不動産ライセンス取得に必要な条件などを一緒に検討した。Sonder
さらにRoseは、Louisが不動産業界で働くことを強く希望していることを理解したうえで、地域の不動産会社へ直接働きかけた。
その結果、Louisは実際に不動産会社で働く機会を得た。本人は当初、営業職へ直接進むことを考えていたが、会社側から長期的なキャリアの基礎になる別の選択肢として不動産管理業務を提案された。Louisはその提案を受け入れた。Sonder
ここには、単なる求人紹介とは異なる進路上の動きがある。
「不動産業界で働く」という本人の希望は維持しながら、「最初から営業」という当初の想定だけに固定せず、業界内で経験を積む別ルートを選んでいる。
就職して支援が終了したわけでもない。
Roseは就職後もLouisを支援し、新しい職場へ適応しながら仕事上の課題に対応し、自信をつける過程に伴走した。Sonder
利用から約1年後、Louisは同じ不動産業界で経験を積み続けている。
上司によると、当初は非常に物静かだったが、その後は職場で冗談を言い、同僚を助け、新しく入った社員を迎える側にもなった。本人自身も、技術的な能力だけでなく、人とコミュニケーションを取り、自分が望んでいた方向へ進み続ける自信を得たと述べている。Sonder
現在20歳となったLouisは、以前から入りたかった不動産業界でキャリアを築いている。仕事以外では父親になる準備を進め、将来自分の家を建てることも考えている。仕事だけでなく、その先の生活まで視野に入った変化となっている。Sonder
料金は無料である。headspaceによると、Work & Studyは政府資金で運営され、若者に無料で提供されている。オンライン型では15~25歳を対象に、通常約3か月、30分~1時間の面談を週1回または隔週で行う。今回Louisが利用した対面支援については、本人の具体的な利用期間・面談回数は公開記事から確認できない。ヘッドスペース
この事例は、SK進路との接点が明確である。
主題は「メンタル不調から元の状態へ戻ること」ではない。
本人には「不動産業界で働きたい」という希望があった。しかし、希望はあっても、どう実現するかが分からず動けない状態だった。支援者と、必要な資格、費用、面接、業界への入り方を具体化し、さらに当初想定していた営業職だけでなく、不動産管理という別ルートも受け入れた。
つまり、
やりたいこと → 必要な材料を調べる → 実現方法を検討する → 実際に試す → 当初とは異なる入口も比較する → 本人が決める → 就職後も検証する
という流れがある。
これは、SK進路が事業資源として持つ「比較・調査・整理・試行・判断」と近い。
一方、Louisは最初から不動産業界という方向を持っていたため、「何をしたいのか自体が分からない進路迷子」とは異なる。また、3か月以内に仕事と生活の方向を判断する必要があったことも確認できないため、SK進路Lv.3の条件に該当するとは判断できない。
それでも、メンタル不調経験後の支援を「復職」に限定せず、本人がやりたいことを起点に、その希望を現実の仕事へ変えるサービスが実際に利用され、その後まで確認できる事例として重要である。
出典:Sonder「From a dream job to a career: Louis’ story」、2026年8月26日。Sonder
制度確認:Australian Government Department of Social Services、headspace Work & Study。Department of Social Services


