適応障害で休職した看護師が、復職コーディネーターによる支援を利用し、自分が復職するうえでの障壁を整理した上で、上司との面談準備や再発予防計画を進めながら段階的に職場へ戻った事例がカナダ・ケベック州から報告されている。
事例は2026年5月15日にデジタル公開された査読誌「Santé mentale au Québec」の臨床・組織事例研究である。大学や医療機関に所属する研究者4人が報告しており、事業者が掲載した利用者成功事例とは性格が異なる。Érudit
対象となったのは、適応障害によって就労不能となり休職した看護師である。年齢や休職期間、収入などの詳細は公開情報から確認できない。Érudit
利用したのは、復職コーディネーターによるReturn-to-Work Coordinationである。

復職コーディネーターは、本人だけを対象にした心理療法ではなく、本人、医療・支援側、職場側など復職に関係する人の間を調整しながら、職場へ戻る過程を支援する役割を持つ。
今回の事例では2人の復職コーディネーターが支援に関わった。PubMed
特徴的なのは、最初から「職場へ戻す」ことだけを進めていない点である。
まず、ROSESと呼ばれる「復職の障壁と、それを乗り越える自己効力感」を把握するための標準化された尺度を使用し、本人が復職する際に何が障壁になるのかを評価した。その上で、優先して扱う問題を特定している。PubMed
支援内容には、心理教育、再発予防計画の作成、上司との面談準備が含まれた。
さらに、一度計画を決めて終わるのではなく、段階的な復職が始まった後も本人の状況に合わせて支援内容を継続的に調整している。Érudit
つまり、休職→復職という単純な二段階ではない。
「何が復職を妨げるのか」
「どの問題から対応するのか」
「上司と何を話す必要があるのか」
「再び不調にならないために何を準備するのか」
を整理しながら、実際の職場復帰へ進んでいる。
研究では、メンタル不調による休職から完全な職場復帰までを3段階のプロセスとして捉えている。今回の看護師についても、復職コーディネーターが介入内容を調整しながら段階的な復帰を支え、最終的な職場再統合を支援した事例として報告されている。Visualize JOVE
ただし、公開されている抄録だけからは、復職後の勤務時間、配置、仕事内容、復職後何か月勤務を継続したかまでは確認できない。
また、本人が「復職するか、退職するか、転職するか」を比較した事例でもない。
進路として選ばれた方向は復職であり、その方向を実現するために必要な条件を整理した事例となる。
利用料金についても公開情報からは確認できない。カナダの医療・職場復帰支援の中で実施された事例であり、日本の個人向け有料キャリアサービスと料金を直接比較することはできない。
SK進路との接点は、メンタル不調経験後の本人に対して、単に症状の改善を待つのではなく、仕事へ戻るための「障壁」「優先課題」「職場との調整事項」「再発を防ぐ条件」を具体的に整理している点にある。
SK進路の現在の事業定義では、復職、現職継続、異動、休職継続、退職、転職、学び直しなどを比較し、本人が納得して次の方向を決めることを扱う。
今回の支援は、その前段階の選択肢比較よりも、すでに選ばれた「復職」という方向を実行可能な形へ落とし込む支援に強い。
したがって、SK進路と完全に同じサービスではない。
一方、「本人の状態を確認する→障壁を抽出する→優先順位をつける→職場との面談を準備する→計画を実行する→状況に応じて修正する」という流れは、SK進路が持つ「Clarify → Develop → Commit」や、比較・調査・整理・試行・判断という事業資源と近い構造を持つ。
また、今回は看護師という専門職の事例である。メンタル不調後の進路再設計が特定の職種だけに生じる問題ではなく、専門職でも「以前と同じように戻る」だけではなく、復帰条件そのものを整理する必要があることを示す事例となる。
出典:Eve-Lyne Robitaille-Beaumierほか「Tracer la voie du retour au travail durable」、Santé mentale au Québec, Vol.51 No.1, 2026。誌面は2026年5月15日にデジタル公開された。Érudit


