33年間教壇に立った教員が、業務負担や生徒の行動の変化を背景に学校を離れ、これまでの経験を生かしてテクノロジー企業へ移った事例が報じられた。
2026年10月5日、豪州のAdelaide Nowは、メルボルンの高校でイタリア語を教えてきたMaria Sabo氏が教職を離れ、不動産テクノロジー企業へ転職した経緯を報じた。アデレードナウ
今回の事例は、単なる教員不足の話ではない。長年教員として働いた人が、何を理由に離職を決め、教員時代に身につけた能力をどのように別の仕事へ移したのかという、教員本人の進路転換の事例である。
33年の教員生活から離職
Sabo氏はメルボルンの高校で33年間、イタリア語を教えてきた。
転機の一つとなったのが2025年の勤務環境の変化だった。勤務校が3キャンパスへ拡大し、昼休みにキャンパス間を移動する必要が生じたほか、それまでとは異なる小学校段階の授業も担当するようになった。
仕事量が増え、私生活に使える時間が少なくなったという。アデレードナウ

さらに、生徒の行動も離職判断に影響した。授業中の妨害や反抗的な態度などへの対応が増え、生徒一人ひとりに必要な支援を提供することも難しくなったと振り返っている。アデレードナウ
生徒行動を理由に離職を考える教員は増加
Sabo氏だけの問題ではない。
豪州の公的な教員 workforce data を扱うAustralian Institute for Teaching and School Leadershipのデータについて、ABCは2026年9月3日、離職を考えている教員のうち「生徒の行動」を理由に挙げた割合が2020年の25%から2024年には47%へ上昇したと報じている。ABCニュース
また、豪州の中堅教員を扱った2026年の研究では、キャリア中期の教員で「退職まで教員を続ける」と回答した割合は30%にとどまり、離職を考える最大の理由は業務量だった。研究は3つの調査、計1万6000人超の教員データを分析している。Taylor & Francis Online
長く勤めればそのまま定年まで教員を続ける、とは限らない状況が確認されている。
教員経験を「別の仕事」で使う
Sabo氏が選んだのは、教育現場から完全に引退することではなかった。
転職先は不動産テクノロジーのスタートアップで、教員時代に培った営業、コンテンツ制作、マネジメントなどの能力を新しい仕事で使っている。アデレードナウ
ここが教員本人の進路を考えるうえで重要になる。
教員から転職する場合、「教員免許を使える次の仕事」を探すだけでは、選択肢は限定される。
一方で、教員の仕事を分解すると、説明する、企画する、人を動かす、資料をつくる、複数の業務を管理する、相手に合わせてコミュニケーションを変える、といった職業横断的な能力が含まれている。
Sabo氏の事例では、それらを別業界へ移している。
「教員を辞める」と「経験を捨てる」は別
SK進路の対象となるメンタル不調経験後の進路再設計でも、復職・継続・異動・退職・転職を比較する際に、この区別は重要になる。
教員を辞めることと、これまでのキャリアをゼロにすることは同じではない。
教員を続ける。
学校を変える。
担当や働き方を変える。
教育周辺の仕事へ移る。
教育以外の業界へ移る。
そのどこでも、これまで蓄積した能力の一部を持っていける可能性がある。
今回の事例は一人のキャリア転換であり、すべての教員に同じ道が成立することを示すものではない。
それでも、33年間教員だった人が「教員経験しかない」と捉えず、経験を別の職種で使い直した事例は、教員本人が退職後の選択肢を比較する具体的な材料になる。
出典:Adelaide Now、2026年10月5日公開。豪州の教員離職傾向についてAITSL関連データ、ABC、Monash Universityの研究も確認。アデレードナウ
Adelaide Now「Bad behaviour, workload: Why this teacher quit after 33 years」
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