2026年9月28日から10月4日までにSK進路で公開した記事から、子どもの自立、親の関わり方、進路選択、NEET・社会的孤立状態の若者への支援に関する記事をまとめます。
今週は、子どもへ責任を渡す段階、親の支援・干渉・関与不足の違い、生成AI利用の自律性支援、学校や仕事から離れた若者を就労や社会参加へつなぐ各国の制度・事業を確認しました。同じ英国のJobs Guaranteeを扱った2記事は一つに統合しています。

子どもの自立は、自由の量だけでなく安全条件と段階が関係する
英国の研究では、イングランド9地域の子ども・若者8,988人を対象に、保護者なしで移動・行動できる範囲とウェルビーイングの関係を分析しました。対象は11歳以下7,780人、12〜18歳1,208人で、地域活動の開始時データを使った横断研究です。
11歳以下では、一人で行動できる範囲の広さとウェルビーイングの低さに小さな関連がありました。12〜18歳全体では統計的に明確な関連はありませんでしたが、地域を安全だと感じていない若者では、一人で移動できる範囲の広さとウェルビーイングの低さとの関連が強くなっていました。
ここで測定された「自立」は、進路や生活全般を自分で決める能力ではなく、大人の付き添いなしで地域を移動できる範囲です。また一時点の横断研究であり、一人で行動することがウェルビーイングを下げたという因果関係は示していません。
親の心理的統制とショート動画の問題的利用には関連
中国の中高生1,277人を対象とした研究では、親による「心理的統制」が高いほど、ショート動画の問題的利用も高いという関連が確認されました。対象は女子628人、男子649人、平均年齢14.0歳で、全員が過去12か月以内にショート動画を利用していました。
研究上の心理的統制は、利用時間のルールなどの行動管理とは異なり、愛情を引き上げる、罪悪感を抱かせる、親の権威で従わせるといった方法で、子どもの考え、感情、自己表現、意思決定へ介入する関わりです。
研究モデルでは、心理的統制から問題的ショート動画利用への総効果のうち、心理的な消耗を経由する経路が35.08%、将来への否定的な見方を経由する経路が12.62%、両者を順に経由する経路が12.92%でした。最終モデルは問題的利用の分散の23%を説明しました。ただし横断研究であり、心理的統制が問題的利用を引き起こしたとは断定できません。
関連記事:親の心理的統制と中高生1277人の動画利用-中国-
進路選択では、干渉だけでなく関与不足も困難さと関連
中国の高校生1,592人を対象とした研究は、進路に関する親の行動を「支援」「干渉」「関与不足」に分けました。親からの支援が多いほど進路決定の困難さは低く、干渉と関与不足は、どちらも困難さの高さと関連していました。
支援と進路決定の困難さとの関係では、本人のキャリア意思決定自己効力感が部分的な媒介要因になっていました。一方、干渉と関与不足では同じ媒介関係は確認されませんでした。この結果は中国の高校生を対象とした関連分析であり、日本の親子にそのまま一般化することも、親の行動が困難さを直接引き起こしたと解釈することもできません。
関連記事:親の干渉も関与不足も進路決定を難しくする 高校生1592人-中国-
「完璧な親」への圧力と過保護の関連
ベルギーの思春期の子どもを持つ親418人、330家庭を対象とした研究では、社会やメディア、他の親などから「完璧な親であること」を求められていると強く感じることが、母親・父親の双方で過保護の多さと関連していました。対象は母親276人、父親142人で、子どもの平均年齢は16.35歳でした。
父親では、社会的圧力の高さと学業面での統制的な子育てにも関連がありました。母親では、子どもとの関係を自分自身の重要な一部として捉える傾向が強いほど、過保護と統制的な子育てが多いという関連も確認されました。ただし横断研究であり、社会的圧力が過保護を引き起こす因果関係を確定したものではありません。参加者はベルギーのフランス語圏に住み、高学歴層が多いという制約もあります。
関連記事:「完璧な親」への圧力が過保護と関連 418人-ベルギー-
親の期待と本人の意思は「従うか反抗するか」だけではない
中国系インドネシア人6家族34人を対象とした質的研究では、若者が親や祖父母の文化的期待にどう対応しながら主体性を確保するかを調べました。資料は25回の非公式な交流、18回のインタビュー、参加者が撮影した150枚以上の写真、36ページのフィールドノートです。
研究で確認されたのは、若者が家族の期待を全面的に受け入れるか拒否するかではなく、複数の方法で期待を交渉し、本人と家族の双方にとって生活可能な関係をつくる過程でした。6家族の質的研究であり、インドネシア全体や日本の家庭へ一般化できる結果ではありません。
関連記事:親の期待と自分の意思を交渉する若者34人-インドネシア-
生成AIは「禁止か自由か」ではなく、使い方の自律性を検討
子ども・若者の生成AI利用を扱った研究レビューは、一次研究46本を検証しました。内訳は大学生対象が35本、18歳未満を含む研究が8本、横断研究が26本でした。未成年者や家庭を直接扱った研究はまだ少ない状態です。
レビューは、生成AI利用後も本人が考え、確認し、修正し、AIへ何を任せるかを調整できる「認知的な主体性」を重視しています。自律性支援は自由放任ではなく、本人に意味のある選択肢を渡しつつ、明確なルールと理由を示し、本人ができるようになるにつれて支援を減らす関わりとして整理されています。
一方、家庭と学校の双方の関わりを同じ子どもについて測った研究は、検討対象の46本にはありませんでした。家庭と学校の連携効果まで実証されたわけではありません。
英国は健康上の壁があるNEET若者に6か月の有給就労を用意
英国政府は2026年9月27日、障害や長期的な健康上の問題を抱え、教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していない若者へ、Jobs Guaranteeの対象を拡大すると発表しました。新しい対象者への適用は2027年4月に始まる予定です。
健康関連給付を受け、就労能力評価を受けた若者に対し、評価から13週目以降、本人の希望に基づいて仕事を提示します。政府は週25時間を上限に6か月間、賃金を全額負担します。メンタリングのほか、メンタルヘルス、家計、住居の個別支援も組み合わせます。参加は任意です。
政府が引用した調査では、NEET状態の若者で障害があると回答した割合は45%で、2013/14年度の21.1%から2倍以上になっていました。別の英国雇用年金省調査では、16〜24歳のNEET若者417人の84%が就労、教育、訓練のいずれかへの参加を希望し、54%は就労を希望していました。
政府はJobs Guarantee全体で議会任期末までに最大9万人を支援するとしていますが、今回の対象拡大だけの参加者数は公表資料から確認できません。また6か月後の継続就労を保証する制度ではありません。
関連記事:健康上の壁があるニート若者に雇用保証-英国-、ニート若者、13週後から有給就労へ-英国-
英国では給付を受けず支援制度から外れる若者が約30万人
英国財政研究所(IFS)によると、2025年末時点の英国の18〜24歳のNEETは約87万人で、約32万人は失業関連給付を受けず、ほぼ30万人は他の給付も受けていませんでした。
22〜23歳の給付を受けないNEETでは、74%が求職中、4%がボランティアなどの無給活動中、少なくとも4%が大学卒業直後、旅行後、仕事と仕事の間などの移行期でした。54%は大学卒業相当で、57%はNEETになって6か月未満でした。一方、24%は1年以上、19%は18か月以上仕事から離れていました。
80%は親と同居していました。家庭所得では37%が上位3分の1、30%が下位3分の1でした。給付受給中のNEETでは72%が下位3分の1であり、同じNEET分類でも構成が異なります。IFSは、全員を同じ強度で追跡支援する費用対効果には限界があるとも指摘しています。
オーストリアでは、本人が「成功」の基準づくりに参加
オーストリアのJob-Inは、18〜24歳のNEETを対象に2025年8月から2027年7月まで行われる事業です。既存の就労支援や社会制度につながっていない若者も対象とし、決められた曜日や回数で通うのではなく、Open Spaceへ任意に立ち寄れる仕組みです。
料理、ゲーム、スポーツ、創作、応募書類作成などを通じて関心や得意分野を探し、SNSを使うDigital Streetworkと駅・公園でのアウトリーチを組み合わせます。評価では、就職・進学だけでなく、感情面の安定、社会とのつながり、自分で行動する感覚、生活を整える力も扱い、参加者自身が「何を成功とするか」の設定に加わります。
関連記事:ニート若者、自分で成功基準を決める支援-オーストリア-
韓国では、就職前に12週間の「出勤」を置く
韓国の「ともにオフィス」は、19〜39歳の「休んでいる状態」の若者を対象に、2026年9月28日から12月20日まで実施される12週間のプログラムです。特に、社会との接点が減った「孤立・隠遁青年」を優先します。
参加者は平日にオンラインで「出勤」し、週1回のオンライン会議に参加します。希望者30人は、進路を考えるプロジェクト、地域・社会活動、クラブ活動などから一つを選びます。ここでいう出勤は企業での就労ではなく、一定時刻に社会との接点を持ち、生活リズム、人との連絡、自分で活動を決めることを練習する仕組みです。
韓国の「孤立・隠遁青年」は日本の行政上の「ひきこもり」と完全に同じ定義ではありません。また、開始されたプログラムの構造を紹介した記事であり、12週間後の成果はまだ確認されていません。
カナダでは、70時間の訓練から19〜21週間の有給就労へ
カナダのASCENDは、15〜30歳のNEET状態の若者を対象に、3週間・70時間のオンライン就労前訓練を行い、その後、非営利団体や慈善団体などで19〜21週間の有給就労へつなぎます。訓練中には最低賃金相当の手当が支払われ、就労先の賃金も州の最低賃金相当が100%補助されます。
参加前に本人と受け入れ団体の双方から、必要な配慮、本人が抱える障壁、働ける条件を確認してマッチングします。就労開始後も担当カウンセラーが本人と毎週連絡を取り、受け入れ側とも継続して調整します。2026年秋期は4回目のコホートで、9月28日に訓練を開始し、就労配置は10月19日から順次始まる予定です。
今週確認できたこと
親の関わり方を扱った研究では、管理するか放任するかの二択ではなく、安全条件を整える、必要な情報を渡す、本人と話し合う、本人が担える範囲を段階的に広げるという複数の役割が区別されていました。
若者支援でも、学校や仕事から離れた状態から直ちに安定就労へ移すのではなく、生活リズム、社会との接点、本人の希望、必要な配慮、事前訓練、試行的な有給就労、就労中の伴走という中間段階を置く事業が確認できました。
ただし、紹介した研究や制度は対象年齢、文化、社会保障、教育制度が異なります。関連研究から因果関係を断定せず、海外制度を日本へそのまま移せるものとして扱わないことが必要です。

