教員向け週次まとめ
教員の定着は「負担を減らす」だけでは決まらない 今週の4つの動き
今週の教員関連記事では、給与・福利厚生、管理職との関係、学校からの組織的支援、勤務日数という異なる側面から、教員が「この学校で働き続けられるか」に関わる研究・制度が続いた。
共通しているのは、教員定着を一つの条件だけで説明できない点である。賃上げや勤務日数の削減があっても、それだけで定着が改善するとは限らない。一方、本人が教職を続けたいと考えていても、勤務環境によって離職や勤務縮小へ進むケースも確認されている。SK進路
6%賃上げに医療費・住宅支援 「残れる条件」を広げる
米カリフォルニア州Ventura統一学区は9月18日、教員などの有資格職員に対し、2027年1月1日から給与を6%引き上げる案を提示した。
対象には教員のほか、スクールカウンセラー、看護師、学校司書などが含まれる。健康保険では新たに6種類のプランを追加し、高額プランについては学区80%、職員20%の負担とする。一定条件の医療貯蓄口座には最大4,500ドルを学区が拠出する案も含まれる。
さらに学区は約50戸を教職員向け住宅として確保する計画を進めている。給与だけではなく、医療費や住宅費まで含めて地域で働き続けられる条件を整える考えだ。
一方、勤務10年超の職員が期限までに退職・辞職を申し出た場合、退職日まで本人負担分の健康保険料を学区が負担する案も盛り込まれた。
ただし、6%の賃上げは学区側の提案段階であり、教職員組合との合意はまだ成立していない。「6%の賃上げが決定した」と扱うことはできない。SK進路
「辞めたい」のではなく、「この条件では続けられない」
スコットランドの教員63人を対象とした研究では、教職を離れた人だけでなく、勤務時間を減らした人や役職を降りた人まで追跡した。
教職を離れた人の3分の2以上は「reluctant leavers」、つまり教員を続けたい気持ちを持ちながら、持続できない勤務条件によって離職した人に分類された。
背景には、長時間労働、大きな学級規模、追加支援を必要とする子どもへの支援不足、教室内での攻撃的行動、管理職からの支援不足などが挙げられている。
また、完全離職の前に勤務時間を減らしたり役職を手放したりするケースも確認された。研究では、こうした勤務縮小が安定した働き方への変更ではなく、完全離職へ向かう途中の「適応的な撤退」となる場合があるとしている。SK進路
同じ研究チームによる別分析では、離職または勤務縮小を経験した58人のうち36人、62.1%が、管理職の対応によって離職・縮小が加速したと回答している。一方、管理職の支援によって離職が一時的に遅れたとした人は6人、10.3%だった。二つの記事は同じ研究群を扱っているため、ここでは一つの論点として統合する。SK進路
関連記事:「辞めたくないのに辞める」教員が多数 -スコットランド-
関連記事:離職・縮小した教員58人、62%で管理職が離脱を加速 -スコットランド-
英語教員412人、本人の力だけでは燃え尽きを説明できない
中国・河南省の小中高校24校で働く英語教員412人を対象とした研究では、教員本人の社会・感情面の能力と燃え尽きの間に負の相関が確認された。相関係数はマイナス0.40だった。
ただし、本人の能力だけで結果が決まったわけではない。
学校が自分の貢献を評価し、心身の状態に配慮していると感じる程度が高い教員では、社会・感情面の能力と教えることへの自己効力感との関連が強かった。組織的支援を強く感じる群の傾きは0.50、弱い群では0.28だった。
研究で扱われた組織的支援には、管理職の支援、教員の貢献への承認、専門職としての裁量、必要な資源へのアクセスなどが含まれる。
ただし、これは1時点の自己申告による横断研究である。学校からの支援を増やせば燃え尽きが減るという因果関係を証明したものではない。また、対象は河南省3都市の英語教員であり、日本の教員へそのまま一般化することもできない。SK進路
関連記事:英語教員412人、組織支援と燃え尽きの関係 -中国-
週4日制でも、教員定着の明確な改善は確認されず
米国ミズーリ州では、2024~25年度までに559学区中178学区、約32%が週4日制を導入している。
2026年9月9日に公表された研究は、2008~09年度から2023~24年度までの教員個票データを使い、週4日制へ移行した学区と未移行の学区を比較した。
結果、週4日制によって教員定着率が実質的に改善したという証拠は確認されなかった。推定された離職減少は教員100人当たり約0.6人で、統計的にも有意ではなかった。教員数そのものが増えたという証拠も確認されていない。
一方、週4日制導入後には、州内ですでに教員経験を持つ人を採用する割合が上昇し、特別支援教育では採用増加も確認された。
研究では36人の教育関係者への聞き取りも実施され、応募者が増えた、ワークライフバランスが改善した、仕事が楽しくなったという肯定的な評価が多く出ていた。それでも長期の人事データでは、明確な定着改善は確認されなかった。SK進路
関連記事:週4日制でも教員定着は改善せず、178学区を分析 -米国-
今週の教員記事から見えること
今週の事例を並べると、「教員を続けられる条件」は給与、福利厚生、住宅費、勤務日数、管理職との関係、裁量、業務配分、職場からの支援など複数に分かれる。
特にミズーリ州の週4日制研究は、勤務日を1日減らすという大きな変更だけでも、定着全体が改善するとは限らないことを示した。一方、スコットランドの研究では、教職そのものを嫌って辞めたわけではない教員が多数確認されている。
復職・継続・異動・勤務形態変更・退職・転職を比較するときも、「教員を続けたいか」という本人の意思だけでなく、「現在の何が続けられない条件になっているのか」を分けて確認する必要がある。

子育て向け週次まとめ
親の心配・大学選び・ひきこもり・NEET 「本人へ渡す」までの今週の動き
今週の子育て・若者関連記事では、15歳の子どもへの親の介入、大学選択への親の関与、社会的ひきこもり状態からの支援、NEET状態から職業訓練へつなぐ制度が扱われた。
年齢も状況も異なるが、共通するのは「本人に任せればよい」という単純な問題ではない点である。安全や費用を親が担う場面、支援者が最初の接点をつくる場面、本人が自分で選択する場面を分けて考える必要がある。SK進路
15歳の子ども208人 親の心配が強い日は介入も強かった
中国本土の母親と10代の子ども208組を21日間追跡した研究では、母親の心配と子どものプライバシーへの介入、子どもの感情調整との関係が調べられた。
子どもの平均年齢は15.0歳、56.7%が女子だった。母親の平均年齢は42.63歳である。
母親の心配が普段より強い日ほど、母親自身と子どもの双方が、母親によるプライバシーへの介入も普段より強かったと報告した。
さらに、子ども自身が「母親にプライバシーへ踏み込まれた」と感じた場合には、子どもの感情調整の難しさとの関連が確認された。一方、母親自身が「踏み込んだ」と認識していることについては、同じ関連は確認されなかった。
ただし、研究対象は中国本土の208組であり、21日間の日々の変動を追った研究である。この結果から、親の介入が子どもの感情調整の問題を引き起こしたと因果関係を断定することはできない。SK進路
関連記事:15歳の子を心配する母208組、介入と感情に関連 -中国-
大学選びは終盤ほど親の関与が強まる
米国の教育調査・支援会社Encouraが保護者・後見人約1,800人を対象に行った調査では、ミレニアル世代の親はX世代より子どもの大学探しを主導する傾向が強く、その関与は情報収集の初期よりも、出願・入学決定に近づく段階で強まっていた。
ミレニアル世代の親の半数超は、子どもが高校10年生になるまでに大学について考え始めていた。72%は大学側が出願前から保護者へ働きかけるべきだと回答している。
親が重視していたのは、卒業後のキャリア、学費、教育内容、安全性などだった。関連調査では、大学進学を認められた学生の半数超が、最終的な大学選択に親や後見人が影響したと回答している。
ただし、この調査は親の関与が本人の納得感、自律性、入学後の適応へ与える影響を検証したものではない。したがって、親の関与が強いほどよい、あるいは過干渉が増えている、と結論づけることはできない。SK進路
関連記事:大学選びで親の関与が終盤ほど強まる、1,800人調査 -米国-
ひきこもり支援の入口を、ゲームやDiscordの中につくる
シンガポールでは、長期間社会から離れている「hidden adults」への支援を、オンラインゲームやDiscordなどから始める取り組みが進んでいる。
Fei Yue Community Servicesが支援した成人事例は約40件で、2024年当時の約20件から倍増した。TOUCH Community Servicesが2025年に受けた社会的ひきこもりに関する問い合わせは約250件で、2022年の2倍を超えた。
Youth Guidance Outreach Servicesは2025年1月から「Cyber Outreach」を開始し、ゲーム配信、オンラインゲーム、SNS、Discordを通じて若者と接触している。
目的は直ちに外出させることではない。本人が利用している空間で接点をつくり、ダイレクトメッセージ、音声通話、屋外での食事などへ段階的に移していく。
報道された一例では、約2年間社会から離れていた男性が支援を受けて就職したものの、その後退職し、「人生で何をしたいのか分からない」と話している。別の当事者は30代で学び直しを始めている。
なお、シンガポールにはhidden adultsの全国統計がなく、日本の「ひきこもり」と完全に同じ定義でもない。ゲームやインターネットがひきこもりの直接原因だとする因果関係も確認されていない。SK進路
関連記事:ひきこもり支援はゲーム内から始まる -シンガポール-
NEET約98万人に対し、新しい職業訓練の開始は160人
英国では、2025年8月から「Foundation Apprenticeships」が始まった。16~24歳を対象に、賃金を受け取りながら最低8か月の職業訓練を受ける制度である。
政府は現議会期中に最大3万人の開始を見込んでいたが、2025年8月から2026年4月までの開始者は160人だった。
一方、英国の16~24歳のNEETは2026年4~6月に98万1,000人で、同年代の13.0%を占める。
さらに、2026年1~3月のNEET約101万2,000人のうち61万3,000人は、仕事をしておらず積極的な求職活動もしていない「経済的非活動」だった。求人を増やすだけで全員が就職へ移る構造ではない。
英国政府はYouth Guaranteeへ2026/27年度から2028/29年度まで8億2,000万ポンドを投入し、若者向け見習い制度を3年間で5万人増やす方針を示している。Youth Hubも2029年3月までに360か所超へ拡大する計画である。
長期に仕事や教育から離れている18~21歳を対象に、6か月間の有給雇用を提供するJobs Guaranteeも進められている。
制度は増えている一方、Foundation Apprenticeshipsの開始160人という数字は、制度を用意することと、実際にNEET状態の若者がそこへ接続することが別の問題であることを示している。SK進路
今週の子育て記事から見えること
今週の記事では、親や支援者が関わること自体が問題なのではなく、何を周囲が担い、どこから本人へ渡すのかという境界が繰り返し現れた。
15歳の親子では、親が心配して確認することと、子どもが介入されたと感じることに違いがあった。大学選びでは、学費や安全性など親が担う現実的な条件がある一方、本人が最終的に選ぶ領域も残る。
ひきこもり・NEET支援ではさらに、本人へ「自分で決める」ことを求める以前に、社会との接点、相談、学び直し、職業訓練、有給就労などの中間段階が必要となる場合がある。
子どもの自立や若者の進路を考える際には、「親・支援者が関わるか、本人に任せるか」という二択ではなく、状態や年齢に応じて支援と決定権を段階的に移していく視点が必要となる。


