スコットランドで教職を離れた、あるいは勤務時間や役職を大幅に縮小した教員を追った研究から、離職を単純な「本人の希望」として扱えない実態が明らかになった。
英University of the West of Scotlandの研究チームによる研究で、2026年8月7日に『Oxford Review of Education』でオンライン公開された。9月には英紙でも、教員の離職問題をめぐる最新研究として報じられている。 (Research Portal)
研究対象はスコットランドの教員63人である。研究チームは、教職を離れた人だけでなく、勤務時間を減らしたり、管理職などの役職を降りたりした人も対象にして、本人が「辞めようと思った時点」ではなく、実際にどのような行動を取ったのかを調べた。 (Research Portal)

特徴的なのは、教職を離れた人の3分の2以上が「reluctant leavers」と分類されたことだ。
直訳すれば「不本意な離職者」となる。
教える仕事への思いや職業的なコミットメントを失ったために辞めたのではない。教員を続けたい気持ちはありながら、職場の条件が持続できない状態になり、結果として教職を離れていた。 (Research Portal)
背景として報道で挙げられたのは、長時間労働、大きな学級規模、追加支援を必要とする子どもへの支援不足、教室内での攻撃的行動、管理職からの支援不足などである。 (タイムズ)
つまり、「教員を辞めた」という結果だけを見ても、その人が教員という仕事そのものを辞めたかったのかは分からない。
研究では、離職までの過程も重要な論点となった。
多くの離職は、突然の一つの出来事によって決まったのではなく、数か月から数年にわたって不満や負担が蓄積した末に起きていた。このため研究者は、実際に退職するまでには、勤務環境への介入によって離職を防げた可能性のある期間が存在したと分析している。 (Research Portal)
さらに、完全に辞める前に「仕事を縮小する」という動きも確認された。
研究対象には、勤務時間を減らしたり、昇進して就いていた役職を手放したりした教員27人が含まれている。
一見すると、これは教員を続けるための柔軟な働き方にも見える。
しかし研究では、こうした縮小が必ずしも安定した働き方への転換ではなく、完全離職へ向かう途中の「適応的な撤退」となっているケースがあると指摘している。 (Research Portal)
9月3日に同じ研究チームが公表した別の研究では、教職を離れた、または仕事を大幅に縮小した58人への聞き取りから、管理職との信頼関係、教員としての成長機会、勤務条件が、離職までの速度や形に影響していたことも示された。 (Sage Journals)
ここには、教員本人が進路を考える際の重要な区別がある。
「教員を辞めたい」のか。
「今の学校では続けられない」のか。
「フルタイムでは続けられない」のか。
「役職を降りれば続けられる」のか。
それとも、勤務条件を変えても教職から離れたいのか。
すべて「退職」という結果だけを見れば同じに見えるが、その前に存在する選択肢は違う。
SK進路が対象としている復職・継続・異動・退職・転職の比較という視点でも、重要なのは「辞めるか続けるか」を最初に決めることではない。
何が続けられなくなっているのかを切り分けることが、その後の進路を変える。
今回の研究は、教職への思いが残っていても、働き方や職場環境によって教員が職業から押し出される場合があることを示している。 (Research Portal)
出典
Hulme, M. et al., “Teacher turnover in Scotland: reluctant leavers, downscaling, and the limits of voluntary exit”, Oxford Review of Education, 2026年8月7日。 (Research Portal)
Hulme, M. et al., “Thresholds of persistence: How leadership practices shape teachers’ withdrawal trajectories”, 2026年9月3日。 (Sage Journals)

