心身の不調を抱え、仕事に戻る、仕事を続ける、あるいは健康と仕事の両立方法を考えている人に、就労専門家が個別支援を行う英国の「IPSPC」の最終評価が2026年6月25日に公表された。
英国労働年金省(DWP)が委託し、IpsosとInstitute for Employment Studiesが実施した独立評価である。基準時調査には1,971人、中間調査には1,631人、最終調査には1,288人が参加した。基準時に56%がメンタルヘルス上の問題を自己申告し、26%は身体とメンタル双方の問題を抱えていた。GOV.UK

IPSPCは「Individual Placement and Support in Primary Care」の略で、身体・メンタルヘルス上の問題がある成人が、一般就労へ進む、または現在の仕事を維持することを支える制度である。2023年4月に開始され、通常の医療を受けながら利用できる。利用者には、復職したい人、現在の仕事を続けたい人、健康状態と仕事の関係を見直したい人が含まれていた。GOV.UK
支援の中心になるのがEmployment Specialistと呼ばれる就労専門家である。
本人の強み、関心、仕事上の目標を一緒に整理し、仕事探し、履歴書作成、面接準備、企業との接触、就職後の継続支援までを個別に行う。必要に応じて医療、住宅、債務、デジタルスキル、職業技能など別の支援にもつなぐ仕組みだった。GOV.UK
支援では、過去の経験から本人自身が認識していなかった「他の仕事でも使える能力」をEmployment Specialistが整理したことで、仕事への見方や自信が変わったという利用者も確認された。メンタル不調のある利用者に対しては、定期的に状態を確認し、体調に合わせて対面だけでなく電話やオンライン面談も使っていた。GOV.UK
一方、職業プロフィールを作れば自動的に適職が分かるわけではなかった。評価では、プロフィールツールから健康状態に合わない職業や、大学レベルまで学び直さなければならない職業を提示された利用者もおり、多くはその結果を使わず、Employment Specialistとの会話を通じて仕事上の優先事項を整理していた。GOV.UK
利用後の結果も追跡されている。
全体の就業率は基準時の28%から最終調査では39%へ11ポイント上昇した。企業に雇用されて働く人は26%から35%へ増えた。建設、倉庫、教育、小売、飲食、運輸、医療・福祉、ITなどに進んだ事例があり、13週、26週を超えて就労を継続したケースも確認された。GOV.UK
すでに働いていた利用者には別の変化があった。
柔軟な勤務時間や在宅勤務の増加を会社へ求め、現在の仕事を継続した人がいる一方、自分の状態により合う別の仕事へ移った人もいた。ある利用者は、支援を受けて最初の数か月で得た自信によって柔軟勤務を申請し、働き方が大きく変わったと話している。GOV.UK
ただし、成果をIPSPCだけの効果と断定することはできない。
支援を継続した人の就業率は27%から34%へ上昇したが、途中で利用をやめた人でも38%から46%へ上昇していた。評価報告書自身も、就業増加をIPSPC参加だけに帰属させることはできず、さらに効果検証が必要だとしている。GOV.UK
また、途中離脱にも注目する必要がある。最終調査で利用を終了していた人のうち、8%は「体調が悪く参加を続けられなかった」と回答した。反対に約4分の1は仕事が見つかったことを理由に離脱している。GOV.UK
料金については利用者へ無料で提供された公的支援であり、DWPが地方自治体などへ資金を提供する仕組みである。日本の個人向け有料キャリア相談とは制度が異なる。GOV.UK
SK進路との接点が強いのは、「就職させる」だけでなく、すでに働いている人も含めて、本人の健康状態、強み、関心、働く条件を整理し、現職継続、働き方変更、別の仕事への移行という複数の方向を扱っている点である。
特に、職業プロフィールという定型ツールより、本人とEmployment Specialistの対話が仕事上の優先順位の整理に役立ったという結果は、進路再設計との接点が大きい。
一方、SK進路Lv.3は「3か月以内に仕事と生活の方向を判断する必要がある人」を対象とする。IPSPCは公的な就労支援であり、求人探索や企業との調整、就職後支援まで行うため、SK進路とは提供範囲が異なる。
それでも、メンタル不調後の進路が「復職か退職か」の二択ではなく、現職を続けながら条件を変える、別の職場へ移る、自分の強みを別の仕事へ転用するといった再設計を含むことを、大規模な公的評価から確認できる事例である。GOV.UK
出典:英国Department for Work and Pensions「IPSPC Evaluation」、2026年6月25日。
IPSPC Evaluation(GOV.UK)

