ひきこもり状態にある若者を社会と再びつなぐため、本人だけでなく、家族や支援者への働きかけを強める取り組みがイタリアで進んでいる。
2026年10月12日と13日、イタリア北部のマントバで、若者の社会的ひきこもりをテーマとする2つの講座が設定された。
12日は教員、社会福祉職、教育関係者などの専門職向け、13日は保護者や地域住民向けである。
今回の講座は、ロンバルディア州の若者支援事業「Shake the Future Next」の一環として企画された。
この事業は、学校にも仕事にも職業訓練にも参加していない16〜29歳の若者を対象に、社会参加から職業訓練、就労までを個別に支援する仕組みである。Comune di Castel d’Ario
ひきこもりへの対応を、家族と専門職に分ける
10月12日の専門職向け講座では、社会的ひきこもりの兆候を把握する方法や、学校、福祉、保健医療、家庭が協力するための対応がテーマとなった。
翌13日は、家族や地域住民を対象に、社会的に孤立している若者との関係を再び築く方法を取り上げた。
講師は、イタリアのひきこもり支援団体「Hikikomori Italia」の創設者マルコ・クレパルディ氏である。
マントバ市など14自治体が参加する地域連携の枠組みを通じて実施され、地域の家族支援センターも協力した。
特徴は、本人に直接参加を求める前に、周囲の大人がどのように接点をつくるかを扱っている点だ。
なお、今回確認できる公表資料は講座の開催案内であり、参加人数や開催後の成果までは確認できない。Altramantova
背景には、16〜29歳を対象とする30か月の支援事業
今回の講座を実施する「Shake the Future Next」は、2026年3月25日に開始された。
事業期間は30か月。ロンバルディア州の欧州社会基金プラス(FSE+)関連事業として、39万9,000ユーロが充てられている。
対象は、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない16〜29歳の若者である。
支援では、教育者、進路相談員、動機づけ支援の担当者、職業訓練機関、就労支援機関などが連携する。
提供されるのは、個別相談だけではない。
職業体験型の講座、デジタル技能や環境関連技能の訓練、能力の棚卸し、企業実習、地元企業とのマッチングなどが用意されている。
事業の目標は、少なくとも150人の若者に接触し、そのうち50人以上を就労につなげることだ。
これは今後の目標であり、すでに50人が就職したという実績ではない。Altramantova
前身事業では250人以上を支援
マントバでは、以前から「Shake the Future」という若者支援事業が行われていた。
前身事業では、地域の若者250人以上を支援対象として受け入れた。
新事業は、その経験を引き継ぎながら、個別の状況に合わせた支援を強化するものだ。
ただし、250人という数字は支援を受けた人数であり、就職や進学に成功した人数を示すものではない。
新事業では、本人の状況を把握し、活動への参加、技能習得、職業訓練、企業との接続へ進む過程を支援する。
地域の若者相談窓口「Informagiovani」も、相談や事業参加の入口となっている。Mantovauno.it
ひきこもりとニートは同じ状態ではない
今回の講座が対象とする社会的ひきこもりと、事業全体が対象とするNEETは、同じ意味ではない。
ひきこもり状態でも学習や仕事を続けている人はいる。一方、NEET状態であっても外出や社会参加をしている人はいる。
そのため、ひきこもり状態の若者全員が「Shake the Future Next」の対象になるわけではない。
今回の取り組みは、ひきこもりへの理解と支援者間の連携を強化する講座を、既存の若者向け教育・就労支援事業の中に位置づけたものだ。
ひきこもり状態から実際に何人が社会参加へ進み、その後どのような進路を選んだのかについては、今後の検証が必要となる。
家から出た後の選択肢をどう用意するか
ひきこもり支援では、本人が外出できるようになった後の行き先も重要になる。
外出できたとしても、すぐに学校や仕事へ戻れるとは限らない。
マントバの取り組みでは、周囲の大人が本人との接点を回復するための学習機会と、若者本人が技能や仕事を試せる支援事業が同じ地域の枠組みに置かれている。
その一方で、両者が実際にどの程度接続しているのか、長期のひきこもり状態にある人がどこまで参加できるのかは、今回の資料だけでは判断できない。
家から社会へ出ることと、その後に進学・訓練・就労などを選ぶことは、別の段階である。
イタリアの取り組みは、この2つの段階を地域の支援体制の中で扱おうとしている。
出典
カステル・ダーリオ市:ひきこもりに関する講座案内(2026年9月24日)


