メンタルヘルス上の問題を抱える人が、精神保健と就労支援を組み合わせた職業リハビリテーションを利用した後、どのような進路へ移ったのかを追った研究がオランダから報告された。
2026年9月25日に学術誌『Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research』で公開された実装研究である。オランダ中南部の1地域で、精神保健機関、就労支援事業者、自治体、社会保障機関が連携して提供した3種類の職業リハビリテーションを調査した。スプリンガーリンク
対象となったサービスは、LDD、IPS、JITの3種類である。

LDDは、通常の就職へすぐ進むのが難しい人に対し、軽作業などを通じて働くための基本的な力を整える支援である。時間管理、チームワーク、生産性、仕事と私生活のバランスなどを扱い、次の進路も本人と計画する。利用期間の想定は約1年である。スプリンガーリンク
IPSは、本人の希望を起点に一般就労を目指す支援である。就職準備だけでなく、本人に合う仕事のプロフィール作成、求人開拓、企業との調整、職場でメンタルヘルス上の事情をどう伝えるか、就職後の継続支援まで扱う。一般的な精神疾患では最長約2年、重度精神疾患では最長約3年が想定されている。スプリンガーリンク
JITは、仕事に焦点を当てた認知行動療法と職業復帰支援を組み合わせた約1年の支援である。働くことのメリット・デメリットの整理、仕事に関する考え方の見直し、ロールプレイ、自己効力感の向上、再就職計画などを扱う。スプリンガーリンク
2021年から2023年までに129人が利用を開始した。内訳はLDD61人、IPS33人、JIT35人だった。研究時点で利用後の結果を確認できた111人のうち、62人、56%が有償の仕事またはボランティアなどの無償の仕事へ進んでいた。また、社会参加の段階を測る指標では66%が少なくとも1段階前進した。一方、34%は変化がない、または後退しており、途中離脱者も含まれている。スプリンガーリンク
研究では12人の利用者にもインタビューしている。利用者からは、支援によって生活に構造が生まれ、仕事と私生活を両立しやすくなったという声が確認された。また、多くの利用者が自己効力感や仕事への自信の向上を述べている。一方で、得られた仕事に満足していない人や、十分な変化を感じなかった人もいた。したがって「利用すれば就職できる」という結果ではない。スプリンガーリンク
料金については、個人の自己負担額を一律に確認できない。研究では国や自治体の制度によって資金調達方法が異なるとしており、個々の利用者の負担額は未確認である。スプリンガーリンク
SK進路との接点で特に重要なのは、「どの仕事に就くか」以前に、本人の状態・希望・能力に応じて利用する支援そのものを選んでいる点である。
オランダの仕組みでは、精神保健の専門職と就労支援の専門職が本人の希望や状態を確認し、LDD、IPS、JITなどから適した支援を検討する。さらに支援中も「次にどの進路へ進むか」を具体的に計画する。スプリンガーリンク
ただし、SK進路とは明確な違いもある。この研究の3サービスは福祉・医療・就労支援制度の中で提供され、一部の利用者は精神科治療を継続している。したがって129人全員が、SK進路が対象とする「メンタル不調を経験し、現在は安全に次の進路を検討できる段階」に該当するとは確認できない。
それでも、メンタル不調を抱えた人に対して、単純に「就職する」ことだけを目標にせず、現在の状態、働ける時間、生活との両立、本人の希望を整理し、その後の仕事や社会参加の方向を選ぶ支援が実際に運用されていることは確認できる。
出典:Noteboomら「Improving Vocational Rehabilitation for people with Mental Health Problems through Intersectoral Collaboration」、2026年9月25日公開。

