教員505人の追跡研究、長期休職前に低下したのは職場の支援と裁量

教員が精神的な不調によって長期休職する前、職場では何が変化しているのか。

2026年10月12日、国際学術誌『Scandinavian Journal of Work, Environment & Health』に、小中学校教員505人を対象とした追跡研究が公開された。

研究では、180日以上の精神的健康問題による休職を初めて経験した教員について、休職前3年間の仕事の負担や職場環境、心理的な状態の変化を分析した。

その結果、休職が近づくにつれて心理的苦痛は強まっていた一方、仕事量や仕事の難しさは全体として大きく増加していなかった。

むしろ、仕事の裁量、同僚や上司からの支援、仕事への意欲などが悪化する傾向が確認された。

2010〜2023年の調査と休職記録を照合

研究を行ったのは、小林文雄氏と成定明彦氏である。

研究チームは、2010年から2023年に実施された年次の職業性ストレス調査と、行政上の病気休職記録を組み合わせた。

対象は、小学校と中学校の教員505人。

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いずれも精神的健康問題によって、初めて180日以上の長期休職を経験した教員である。

休職の3年前から直前までの変化を分析し、仕事の負担、職場から得られる支援、心理的苦痛がどのように推移したかを検討した。

心理的苦痛の評価には、6項目の尺度「K6」を使用している。

また、教員全体のデータを、結果を比較するための参考情報として利用した。

仕事量は大きく変わらず、心理的苦痛は増加

今回の研究で注目されるのは、仕事の負担と心理的苦痛の変化が一致していなかった点である。

休職が近づくにつれて、心理的苦痛やストレス反応は増加していた。

一方、仕事の量的負担や質的負担は、全体として比較的安定していた。

量的負担とは、処理しなければならない仕事の量に関係する。

質的負担とは、仕事の難しさや求められる対応の複雑さなどに関係する。

つまり、仕事が年々増え続けた結果として心理的苦痛が強まった、という単純な変化ではなかった。

ただし、これは対象者全体の平均的な傾向であり、個々の教員の仕事量が全く増えていなかったという意味ではない。

低下していたのは裁量と周囲からの支援

研究では、休職前に悪化する傾向が見られた職場要因も明らかになった。

主なものは、仕事の裁量、同僚からの支援、上司からの支援、仕事への積極的な関わりである。

仕事の裁量とは、自分の仕事の進め方や方法などを、どの程度自分で決められるかという要素だ。

また、同僚や上司からの支援には、仕事上の相談や協力など、職場で得られる支えが関係する。

休職が近づくにつれて、こうした職場資源に対する評価が悪化していた。

仕事量が大きく変わらなくても、自分で調整できる範囲が狭くなったり、周囲から十分な支援を得られないと感じたりする状況が、心理的苦痛と並行して変化していたことになる。

同じ教員の中でも変化が確認された

研究チームは、対象者全体の傾向だけでなく、同じ教員の中で起きた変化も分析した。

その結果、普段より仕事の量的・質的負担が高い時期には、心理的苦痛の得点も高い傾向があった。

反対に、普段より仕事の裁量が大きく、上司や同僚からの支援が高い時期には、心理的苦痛の得点が低い傾向が確認された。

仕事への積極的な関わりについても同様の関連が見られた。

これらの関連はいずれも統計的に有意だった(P<0.001)。

ただし、研究者は、職場環境の変化と心理的苦痛の間に因果関係があると断定していない。

心理的な状態が悪化した結果、職場の支援や裁量を低く感じるようになった可能性もある。

休職後に同じ職場へ戻る場合の判断材料

今回の研究は、休職前の職場環境を分析したものであり、復職後の再発率や転職後の状態を検証したものではない。

それでも、休職後に仕事をどうするか考える際には、参考となる点がある。

例えば、以前と同じ職場へ戻る場合、仕事量が減るかどうかだけではなく、仕事の進め方を自分で調整できるか、上司や同僚から支援を受けられるかという条件も関係する。

異動する場合も、勤務時間だけでなく、担当業務や職場の協力体制が異なる可能性がある。

一方、現在の職場で必要な条件を整えることが難しければ、勤務形態の変更や別の仕事への転職を検討する場合もある。

これらは研究が特定の進路を推奨しているという意味ではない。

教員本人が復職、継続、異動、退職、転職を比較する際に、仕事量以外の職場条件も確認する必要があるということだ。

今回の研究が示したのは、長期休職前の心理的苦痛の悪化が、仕事の負担増加だけでは説明できないという結果である。

仕事がどれだけあるかだけでなく、その仕事をどの程度自分で調整でき、誰から支援を受けられるのか。

教員の長期休職を考えるうえで、職場環境の異なる側面に注目した研究となっている。

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出典: Kobayashi F, Narisada A, “Diverging trajectories of job demands, job resources, and psychological distress before long-term mental health-related sick leave among teachers”, Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 2026年10月12日公開。

研究論文・原文

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