教員として授業は続ける。しかし、これまで担ってきた追加勤務には協力しない。
2026年10月5日、アイルランドで、中等学校の教員最大2万人が給与をめぐる争議行為を開始した。
アイルランド中等教員組合(ASTI)が同日発表したもので、通常の授業は継続する一方、従来の労使協定に基づく追加勤務など、一部の業務への協力を取りやめている。アイルランド中等教師協会
教員の95%が争議行為に賛成
今回の争議の中心にあるのは、給与と物価上昇の問題だ。
ASTIによると、2026年6月30日に従来の公共部門給与協定が終了した後、新しい協定をめぐる交渉が進んでいない。
組合は、物価上昇によって教員給与の実質的な価値が低下していると主張している。
9月25日に公表された組合員投票では、投票者の95%が争議行為に賛成した。投票率は56%だった。
組合は、給与と物価の差を埋める交渉を政府に求めている。アイルランド中等教師協会

授業は通常どおり、追加勤務には協力しない
今回の初期段階で特徴的なのは、授業そのものを停止していない点である。
ASTIの発表では、通常の教育活動は継続する。その一方で、2010年の労使協定に由来する「Croke Park Hours」など、指定された追加業務への協力を停止した。
Croke Park Hoursは、授業以外の業務に充てられる追加勤務時間を指す。小学校では年間36時間が設定され、授業前後の児童の見守り、会議などに使われてきた。TheJournal.ie
今回の対応は、教員が一方的に勤務時間を短縮できる新制度ではない。給与交渉を目的とした労働組合による争議行為である。
ただし、授業と追加業務を分け、どの仕事を教員が担っているのかを明確にした点は、教員の働き方を考える材料となる。
小学校教員にも広がる
争議行為は中等学校だけではない。
4万8,000人以上の組合員を持つアイルランド全国教員組合(INTO)も10月5日から同様の対応を開始した。
小学校では、通常の授業時間外に行われてきた児童の見守りや保護者面談、職員会議などに影響が出ている。
また、10月14日には公共部門全体のストライキが予定されており、INTOは10月21日の追加ストライキも表明している。10月8日時点で、給与交渉の行方はなお不透明である。RTE
「教員を続けたい」と「今の条件で続けられる」は別
今回のニュースは、教員の退職や転職を直接扱ったものではない。
しかし、教員本人の進路を考えるうえで重要な問題を含んでいる。
教員という仕事を続けたい気持ちがあっても、給与、勤務時間、追加業務、生活費との関係によって、継続が難しくなる場合がある。
ASTIのリッチー・ベル会長も、教職が多くの人にとって経済的に持続可能な職業ではなくなりつつあると訴えている。アイルランド中等教師協会
教員本人が今後を考える場合、少なくとも次の問題は分けて整理できる。
教える仕事を続けたいのか。
現在の給与で生活を維持できるのか。
授業以外の仕事をどこまで担えるのか。
勤務条件が変われば継続できるのか。
同じ教育分野でも、別の学校や雇用形態なら希望する働き方を実現できるのか。
教職を離れる場合、どの経験を次の仕事に生かせるのか。
これらは一つの問いではない。
特に、メンタル不調などを経験した後に進路を考える場合、仕事内容への希望と、実際に継続できる勤務条件を区別する必要がある。
今回のアイルランドの動きは、教員の働き方を本人の努力だけで成立させるのではなく、給与や追加勤務を含む条件として捉え直す事例となっている。
教員を続けるかどうかを判断する前に、何を続けたいのか、どの条件なら続けられるのかを分けて考える。
そのための具体的な材料を示すニュースである。

出典:アイルランド中等教員組合(ASTI)、2026年10月5日。RTÉ、2026年10月5日。アイルランド中等教師協会
休職後、復職か退職かで迷うとき|仕事と生活を決める前に整理したいこと

