ひきこもり状態にある若者が、外出や就職を急がず、自分たちで話題を決めて人と交流する。
フランスでは、社会的にひきこもる若者と専門職が参加する対話グループが約3年間続けられてきた。
2026年7月2日、フランス語圏のひきこもり研究・支援団体AFHIKIは、この取り組みについて経験を共有する専門家向けセミナーを設定した。
報告を担当したのは、精神科医のアラン・メルキュエル氏とユキヨ・ヒサドメ氏。
特徴は、話し合う内容を支援者ではなく若者自身が決めることだ。
月1回、対面でもオンラインでも参加できる
この対話グループは、社会的ひきこもり状態にある若者と、心理職・精神科医などの専門職によって構成される。
開催頻度は約月1回。対面だけでなくオンラインでも参加できる。

参加者は毎回、自分たちで話題を選ぶ。専門職は話し合いを進める役割を担う。
若者に決められたテーマについて発言させるのではなく、本人たちの関心から会話を始める仕組みだ。
AFHIKIの説明によると、グループは参加者から肯定的に受け止められている。
ただし、参加人数、出席率、実際に外出や復学につながった人数は公表されていない。
参加者がまだ人前で発表できなくても続ける
報告には、もう一つ注目すべき点がある。
3年間の活動を経ても、若者の参加者自身が外部向けに経験を発表できる段階には至っていないという。
それでも、活動は肯定的に評価されている。
これは、発表できることや社会復帰を達成することだけで、活動の意味を判断していないという特徴を示す。
長期間、人との接触が少なかった人にとって、ほかの参加者と同じ場にいること、話題を選ぶこと、他者の意見を聞くことも社会との接点になる。
ただし、参加者の具体的な変化や生活状況の改善について、数値による検証結果は確認できない。
誰でも直接申し込めるわけではない
このグループには参加条件がある。
若者は、自分を担当する精神科医、または家族と関わる精神科医から紹介される。
本人が直接申し込んで参加する方式ではない。
そのため、医療機関とつながっていない人や、専門家による紹介を受けられない人には利用上の制約がある。
また、オンライン参加が可能でも、すべてのひきこもり状態の人が無理なく参加できるとは限らない。
本人が参加を希望するか、他者と話す準備ができているかによっても状況は異なる。
フランスでも支援機関の連携が課題
AFHIKIは、精神科医や心理職だけでなく、教育関係者、社会福祉職、家族などを結ぶことを目的とする団体だ。
ひきこもり状態にある人への支援を、医療だけで完結させず、学校や地域の関係者とも連携して考えている。
2026年10月15日には、フランス本土、フランス領ポリネシア、日本のひきこもりを比較するセミナーも予定表に掲載された。
フランス国内だけでなく、異なる地域の社会的ひきこもりを比較する活動も進められている。
ただし、この比較セミナーの研究結果や、対話グループの就労・進学への効果は、公開資料から確認できない。
対話の後、学校や仕事へどうつながるか
ひきこもり状態から社会参加を再開する場合、外出、交流、学習、職業体験、就職など、複数の段階が考えられる。
今回のフランスのグループは、そのうち他者との交流を再開する段階に位置づけられる。
自分で話題を決める経験は、本人が何に関心を持ち、何を話したいかを確かめる機会にもなる。
一方、対話グループを離れた後、どのような進学先、職業訓練、仕事、地域活動へ進めるのかは、公開資料では明らかになっていない。
参加者が自分の希望を見つけたとしても、それを実際に試す場所や支援がなければ、次の段階へ進むことは難しい。
今回の取り組みは、就職や復学までを一貫して支援する制度ではない。
人と話せるようになることと、その後に何をするかを決めることは別の段階だ。
フランスの3年間の実践は、ひきこもり状態にある若者が、自分の関心や意思を表すための時間と場所を持つという選択肢を示している。
出典
- AFHIKI「Séminaires Hikikomori」 — 2026年7月2日の実践報告概要
- AFHIKI「Agenda / Actualités」 — 2026年の活動予定
- AFHIKI公式サイト — 団体の目的・活動内容

