「ひきこもり」と呼ばれた男性、料理は仕事にしない -イタリア-

約10年間、自宅を中心に生活していた男性が、料理番組への参加をきっかけに新しい人間関係を築き、今度は公開イベントで自身の経験を語る。

2026年10月14日、イタリア紙La Nazioneは、料理番組「MasterChef Italia」に出演したマッテオ・リー氏の近況を報じた。

リー氏は10月17日、フィレンツェで開催される「Festival di Luce! 2026」に登壇する予定だ。

注目すべきなのは、長年の社会的孤立から人前に出るようになったことだけではない。

料理の才能を評価されても、それを職業にするとは決めていないことだ。

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17歳から約10年間、自宅中心の生活

リー氏は中国系の両親を持ち、イタリアのボローニャで育った。

17歳ごろから人との接触を減らし、約10年間、自宅を中心とする生活を続けていた。

報道では「ひきこもり」と紹介されているが、本人は2026年2月のインタビューで、自分からその言葉を使ったことはないと説明している。

自宅で金融投資の仕事を続け、家族や友人との交流もあった。夜間には散歩に出ることもあり、完全に社会との接触を絶っていたわけではない。

本人にとって、一人で過ごす時間は必ずしも苦痛ではなかった。

そのため、医学的な診断や日本で一般的に使われる「ひきこもり」の定義に、そのまま当てはめることはできない。

外の世界との接点になった料理

自宅中心の生活のなかで、リー氏が続けていたのが料理だった。

両親が営んでいた総菜店の影響もあり、さまざまな国の料理に関心を持つようになった。

インターネットで各国の調理方法を調べ、家族や友人のために料理をつくった。

単にレシピを再現するのではなく、食材の使い方や食文化、その国の人々の暮らし方まで調べていた。

料理は、自宅にいながら外の世界を知り、ほかの人とつながる活動になっていた。

その後、本人は新しい経験を求め、料理番組への参加を決めた。

料理番組で新しい人間関係を経験

リー氏が出演したのは、2025年12月から2026年3月に放送された「MasterChef Italia」第15シーズンである。

番組では、料理の技術だけでなく、ほかの参加者との協力や競争、人前で自分の考えを伝える経験を重ねた。

2026年2月12日放送回で敗退し、最終順位は7位となった。

しかし本人は、番組への参加を後悔していない。

それまで接点のなかった人々と知り合い、自分が新しい人間関係のなかでも過ごせると分かったことを、重要な経験として語っている。

料理の才能があっても料理人にはならない

番組終了後のインタビューで、リー氏は料理を職業にするつもりはないと説明した。

料理の技術をさらに高めるため、専門的な厨房で実習することには関心がある。

一方、将来は従来の金融投資の仕事に戻る意向を示している。

料理番組への参加も、就職先を見つけるためではなかった。

新しい経験をして、自分の能力を確かめることが目的だった。

ここには、社会参加と職業選択を分けて考える姿勢がある。

何かに挑戦して成果を得たとしても、その活動を生涯の仕事にする必要はない。

料理番組の後も社会との接点が続く

番組出演後、リー氏は2026年5月1日、ウーディネで開催されたFar East Film Festivalの関連イベントにも参加した。

主催者の案内によると、定員30人の料理実演会で、中国料理の技法を使った料理を披露する企画だった。

そして10月17日には、フィレンツェのヴェッキオ宮殿で開かれる「Festival di Luce! 2026」への登壇が予定されている。

このイベントは10月16日と17日の2日間開催され、社会参加、仕事、文化などをテーマに、さまざまな経験を持つ人々が登場する。

リー氏は17日午後の登壇予定者に含まれている。

料理番組への参加が一度きりの出来事で終わらず、その後も人前で活動する機会につながっている。

ただし、登壇は今後の予定であり、開催後の成果を示すものではない。

社会参加の後に何を選ぶか

ひきこもり状態から社会参加へ進むとき、就職や復学が最終目標として設定されることがある。

しかし、リー氏の経験はそれとは異なる。

自宅で続けていた好きな活動を外の世界で試し、新しい人間関係を経験した。そのうえで、料理を職業にするかどうかは別に判断している。

これは、本人の選択が尊重される進路の一例となる。

もちろん、リー氏は自宅で仕事を続けており、長期間無業だった人の就労移行事例ではない。本人の経験を、ひきこもり状態にある人すべてに当てはめることもできない。

それでも、社会参加を始めた後に、本人が何を続け、何を仕事にし、どのような生活を望むのかという問題は残る。

社会に出ることと、その先の生き方を決めることは同じではない。

今回の事例は、その違いを具体的に示している。

出典:

  • La Nazione「Festival di Luce!, storie di cucina e tenacia」(2026年10月14日)
  • il Resto del Carlino「Matteo Lee dopo Masterchef」(2026年2月17日)
  • Fanpage.it「Matteo Lee: Non farò lo chef」(2026年2月)
  • Far East Film Festival 2026 公式イベント案内
  • Festival di Luce! 2026 公式プログラム
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