学校に通わなくなった若者や、仕事・職業訓練から離れそうな若者に対し、サッカークラブが新しい支援の入口になる。
2026年10月9日、英国のプロサッカーリーグ「プレミアリーグ」は、NEET(教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していない状態)になるリスクがある子ども・若者を、今後5年間で25万人以上支援する方針を発表した。
全国100以上のプロサッカークラブ関連慈善団体が、学校や地域の支援機関と連携する。
特徴は、就職相談窓口で若者を待つのではなく、サッカークラブという身近な場所から、学びや仕事への接点を作ることにある。プレミアリーグ
100以上のクラブが、学校や地域と連携
今回の支援は、プレミアリーグが長年実施してきた地域活動を拡大するものだ。
学校や地域団体と協力して、教育や就労から離れるリスクがある若者を見つけ、本人の状況に応じた活動を提供する。

具体的には、個別のメンタリング、集団活動、生活技能の習得、職業理解、就労準備などが含まれる。
サッカーをすることだけが目的ではない。
クラブの知名度や地域とのつながりを活用し、通常の支援制度では接点を持ちにくい若者にも参加機会を提供する。
今回の25万人以上という数字は、今後5年間の支援目標であり、すでに支援を終えた人数や就職が決まった人数ではない。プレミアリーグ
学校に通う11〜18歳にも、すでに支援実績
既存の取り組みの一つが「Premier League Inspires」だ。
11〜18歳を対象とし、学校や代替教育施設で、対面活動、メンタリング、ワークショップ、地域活動などを実施している。
2019年の開始以来、1,000以上の学校・教育施設で5万5,000人以上が参加した。
2026/27年度には、実施するクラブ関連慈善団体が61団体に拡大している。
シェフィールド・ハラム大学などによる評価では、参加した学校の96%が授業への参加意欲の向上を認め、約80%が欠席の減少に役立ったと回答した。
ただし、これは学校側の評価であり、参加者の96%が改善したという意味ではない。プレミアリーグ
16〜24歳には、職場体験や個別相談も
すでにNEET状態にある若者への支援も行われている。
ニューカッスル・ユナイテッド財団の「NU Futures」は、学校や仕事から離れた若者を含め、就労機会を得にくい人を対象に活動している。
提供するのは、個別メンタリング、対人技能の習得、デジタル分野の学習、企業との交流、職場体験などだ。
16〜24歳向けには、就職面接の準備や、企業と直接接点を持つ機会も用意されている。
財団の案内によると、年間約250社と協力して職業理解や就労準備の活動を実施している。Newcastle United Foundation
さらに、同財団の地域拠点では、NEET状態の16〜24歳などを対象に、無料の就労準備支援も提供している。
内容には、履歴書作成、模擬面接、資格取得支援、14週間の自己成長プログラムなどがある。
いきなり採用面接に進むのではなく、本人の状況に合わせて準備できる仕組みとなっている。Newcastle United Foundation
英国では約100万人がNEET状態
英国では、16〜24歳の約100万人が教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していない状態にある。
政府の若者雇用問題に関する調査では、対策が不十分な場合、今後5年間でさらに最大25万人がNEET状態になる可能性が指摘されている。
背景には、学校への出席状況、学力、健康上の問題、支援制度との接点不足など、複数の要因がある。
2026年10月7日には、英国の研究機関Centre for Young Livesも、サッカークラブ関連慈善団体が教育・就労支援に果たす役割について報告書を公表した。
同報告書は、地域で信頼関係を築いてきた団体を、公的な雇用・教育支援制度とさらに連携させる必要性を指摘している。センター・フォー・ヤング・ライフ
就職相談に来ない若者と、どこで接点を持つか
今回の取り組みは、就職や進学を直接支援するだけではない。
学校に行きづらい若者、将来の仕事を考えられない若者、支援機関との接点がない若者に対し、サッカークラブを入口として活動機会を提供する。
そこから、個別相談、職業理解、技能習得、職場体験、教育・訓練への参加につなげていく。
一方、今回の発表だけでは、25万人のうち何人が実際に就職・進学するのか、支援終了後も活動を継続できるのかは分からない。
また、支援対象にはNEETになる前の若者も含まれ、日本でいう「ひきこもり」だけを対象とした制度ではない。
それでも、学校や仕事から離れた人の次の行動を考えるうえで、特徴的な仕組みがある。
最初から就職先を探すのではなく、本人が参加しやすい場所で社会との接点を作り、そこから学びや仕事を試せる機会につなげる。
英国では、サッカークラブがその役割を担い始めている。
出典

