仕事を探したい。職業訓練にも参加したい。しかし、そこへ通う交通費が負担になる。
英国で、こうした問題に対応する新しい若者支援が進んでいる。
2026年10月6日、英国西部の広域自治体「West of England Mayoral Combined Authority」は、ニート状態にある18〜21歳の若者を対象とする支援事業の実施状況を公表した。
事業名は「Mayor’s Youth Support Fund」。
総額200万ポンドの基金を活用し、今後3年間で1,000人以上の若者を支援する計画だ。
特徴は、就職相談や職業訓練だけでなく、参加者に12か月間の無料バス利用を提供することにある。西エングランド連合当局
就職支援だけでなく、通うための交通費も支援
今回の制度は、学校に通っておらず、働いてもおらず、職業訓練も受けていないNEET状態の若者を対象としている。

支援内容は、個別相談、技能習得、就労準備、教育・訓練への参加支援などだ。
さらに、生活上の障壁を減らすため、交通や住居に関する実務的な支援も行う。
なかでも特徴的なのが、参加者への12か月間の無料バス利用の提供だ。
職業訓練に参加するにも、企業の面接を受けるにも、現地へ移動する必要がある。
しかし、収入がない若者にとって、移動にかかる費用は活動の負担になる。
今回の制度は、相談や訓練の機会を用意するだけでなく、そこへ行くための手段も支援する仕組みとなっている。西エングランド連合当局
18〜21歳の1,000人以上を対象に支援を拡大
基金は、2025年に始まった「Youth Guarantee Trailblazer」という若者支援事業を拡大するものだ。
新たな支援は、地域の非営利団体、コミュニティ団体、社会的企業などを通じて提供される。
2026年10月6日の発表では、すでに支援を受けている若者や実施団体を広域自治体の首長が訪問したことが報告された。
支援の現場では、個別相談だけでなく、短期講座、職場体験、社会参加につながる活動も行われている。
たとえば、実施団体の一つは、若者の就労準備の段階に応じて、個別支援から短期講座、実習までを提供している。
別の団体では、スポーツ活動を通じて、失敗から立ち直る力や継続する力を身につける取り組みも紹介された。
最初から就職活動だけを求めるのではなく、本人の状態に応じて、参加できる活動を組み合わせる仕組みだ。西エングランド連合当局
先行事業では125人が就職・進学・訓練へ
西イングランド広域自治体が公表した事業報告によると、先行するYouth Guarantee Trailblazerでは、約400人の若者が支援につながった。
そのうち125人が、有給の仕事、見習い訓練、教育、職業訓練のいずれかへ進んだ。
この125人は先行事業の実績であり、今回の200万ポンドの基金による新規支援の成果ではない。
広域自治体は、こうした取り組みをさらに拡大し、学校・仕事・訓練のいずれにも参加していない若者を減らす方針を掲げている。西エングランド連合当局
「働くための支援」だけでは解決しない問題
今回の制度が注目される理由は、仕事に就くための技能や知識だけでなく、活動に参加するための生活条件も支援対象にしている点だ。
学校や仕事から離れた若者が次の行動を起こす場合、必要になるのは求人情報だけではない。
自宅から活動場所までの移動、生活環境、本人に合う支援者との接点など、複数の条件が関係する。
今回の基金では、こうした条件を整えながら、就職、学び直し、職業訓練などにつなげることを目指している。
ただし、無料バス利用は制度参加者への支援であり、地域のすべてのNEET若者が無条件に利用できる制度ではない。
また、今回の発表だけでは、支援参加者の長期的な就業継続率や、どの程度の若者が希望する仕事・学びに進めたのかまでは分からない。
就職する前に、社会とつながる手段を用意する
日本の「ニート」と英国のNEETは定義が完全には一致せず、今回の制度もひきこもり状態の人だけを対象にしたものではない。
それでも、学校や仕事から離れた人が、その後どこへ進むかを考えるうえで参考になる。
今回の英国の取り組みは、就職活動を促すだけではない。
相談に行ける。職業訓練に通える。短期講座に参加できる。実際の仕事を試せる。
そのために必要な移動手段まで支援する。
就職という最終的な結果だけでなく、そこへ至る途中の活動を可能にすることが、今回の制度の特徴となっている。
出典

