精神的な不調を長く経験し、将来への希望を失っていたオランダの50代女性が、学習とボランティア活動を経て、有給のピアサポート職に就いた。
2026年8月14日、学術誌『Journal of Participatory Medicine』が、オランダのEnik Recovery College利用者を対象とした研究を公開した。
研究に登場するNorahさん(仮名)は、長年、自分には学業も仕事も難しいと考えていた。しかし、同じ経験を持つ人との交流や活動を通じて、自分にも他者へ提供できるものがあると気づき、支援を受ける側から支える側へ進んだ。
自分にはもう何もできないと思っていた
Norahさんは長年、精神保健サービスを利用していた。
学業を終えることや家庭を持つことなど、以前は考えていた人生の可能性を失ったと感じていた。
本人は、自分を失敗者のように捉え、将来に希望を持てなかったと研究者へ語っている。

転機の一つは、精神保健支援機関が提供する感情調整の技能訓練だった。
久しぶりに一つの学習課程を修了できたことが、自信につながった。
その後、WRAP(元気回復行動プラン)というプログラムにも参加した。
そこで、もう一度学ぶことや働くことへの希望が生まれ始めた。
利用したのはEnik Recovery College
Norahさんが次に利用したのは、ユトレヒト地域のEnik Recovery Collegeだった。
ここは精神的な困難を経験した人たちが、互いの経験を共有しながら学び、活動する施設である。
医療機関による治療ではなく、本人の経験や関心を生かした学習と交流を中心としている。
提供内容には、WRAPなどの講座、グループ活動、交流の場、ボランティア活動がある。
施設は経験当事者によって運営され、利用者は学習者、訪問者、ボランティア、職員など、異なる役割で参加できる。
診断書や正式な紹介状は不要で、講座や活動は無料である。
他者の経験から、自分の可能性を考え直した
Norahさんは、精神的な困難を経験しながらも、自分の居場所や役割を見つけた人たちに出会った。
それまで、自分には仕事や学習の可能性が残されていないと考えていた。
しかし、他者の経験を知り、自分にも何かできるのではないかと思うようになった。
その後、講座への参加だけでなく、ボランティア活動も始めた。
活動の中では、仕事を任されたり、他者と一緒に企画を考えたりする経験を重ねた。
自分の役割が認められることによって、他者の役に立てるという実感が生まれた。
ボランティアから有給の仕事へ
Norahさんは、学習者とボランティアとして試行錯誤を重ねた後、Enikの有給ピアサポート職に採用された。
本人によると、有給で働けるという自信を得て実現するまでに、約3年を要した。
仕事では、他の参加者の能力や関心に目を向け、活動や企画に参加できるよう支えている。
自分が始めた企画が形になり、参加者が刺激を受けて帰っていくことに喜びを感じているという。
また、有給の仕事によって生活に一定のリズムが生まれ、自分の収入を得られるようになった。
ただし、給与額、雇用契約の詳細、現在の勤務状況は未確認である。
働き始めた後も困難は残った
Norahさんは、有給職に就いた後も、自分への評価が低くなったり、職場での出来事に強いストレスを感じたりすることがあった。
その一方で、同僚に支援を求めることや、仕事を分担することを学び続けていた。
仕事を得たことが、すべての問題の解決を意味したわけではない。
それでも、仕事を通じて人とのつながりや、自分が必要とされる経験を得ていた
料金・期間・研究の位置づけ
Enikの講座・活動は無料。Norahさんの施設利用歴は研究時点で4年以上だった。
研究は2022年11月から2023年1月に日記記録と面接を実施し、2026年8月に公表された。今回新たに確認された2026年の就職事例ではない。
研究では当初26人への面接を行い、その後5人が日記調査に参加。論文では3人の経験を詳しく分析した。
研究者は、他者との経験の交換と、実際に行動することの両方が変化につながる過程を確認した。
ただし、参加者の選択に偏りがあり、施設の効果を因果的に証明した研究ではない。研究にはEnik関係者も参加している。
SK進路との接点
今回の特徴は、最初から職業を決めていたわけではないことにある。
Norahさんは、学び直しを通じて可能性を考え始め、ボランティア活動で自分の能力を確かめ、その経験から有給の仕事を望むようになった。
これはSK進路が重視する、希望や関心の明確化、試行、振り返り、納得した方向の選択と接点がある。
一方、Enikはピアサポートと学習の施設であり、SK進路の個人向けキャリア相談とは異なる。3か月以内の判断期限があったかも未確認である。
自分に何ができるか分からない状態から、実際に活動することで、やりたい仕事が見えてくる。
今回の研究は、その過程を具体的に示している。


