教員を辞めてから15年。それでも、もう一度学校で教える道がある。
2026年10月、オーストラリアのビクトリア州で、長期間教職を離れていた元教員が学校に戻る動きが報じられた。
豪州紙Herald Sunによると、経験者向けの復帰登録制度を利用する教員は296人に増加。2025年3月時点の27人から大幅に増えている。
なかには15年間教職を離れた後、再び小学校で教え始めた女性もいる。
背景にあるのは、過去の教職経験を認め、復帰に必要な手続きを簡素化する制度だ。ヘラルド・サン
復帰登録は27人から296人へ
ビクトリア州の教員登録を管理するVictorian Institute of Teaching(VIT)は、教職経験者向けの登録区分「Experienced Returning Registration」を導入している。

2026年7月に公表されたVITの公式報告書では、経験者向け復帰登録者数は次のように推移していた。
| 時点 | 登録者数 |
|---|---|
| 2025年3月末 | 27人 |
| 2026年3月末 | 159人 |
| 2026年6月末 | 237人 |
| 2026年10月の報道 | 296人 |
2026年4〜6月だけでも159人から237人へ49.1%増加した。
10月に報じられた296人という数字は報道によるもので、今回確認できたVITの公式統計は6月末の237人までである。
また、これらは復帰登録者数であり、全員が実際に教職へ再就職したことを示す数字ではない。Victorian Institute of Teaching
15年の空白があっても復帰できる
制度の対象は、過去にオーストラリアまたはニュージーランドで正式な教員登録を受けていた経験者だ。
VITが示す対象条件には、過去5年以内、5〜10年、10〜15年の登録経験者が含まれる。
ただし、10〜15年の空白がある場合には、その期間中に教育に関連する経験や学習を続けていたことを示す必要がある。
例えば、教育関連の学び直し、教育コンサルティング、家庭教師などの経験が審査対象となる。
以前の教員資格を持っているだけで、無条件に復帰できる制度ではない。Victorian Institute of Teaching
復帰後2年間で80日の授業経験
経験者向け登録が認められた教員には、正式登録へ戻るための2年間が与えられる。
この間に、オーストラリアまたはニュージーランドの学校などで80日以上の授業経験を積む必要がある。
さらに、現行の教員専門職基準を満たすこと、職業倫理や児童の安全に関する規定を理解すること、勤務先による能力確認を受けることなどが求められる。
従来必要だったInquiryと呼ばれる実践調査や審査パネルの手続きは、この復帰制度では不要となった。
復帰後の働き方は、常勤だけに限定されない。
非常勤や臨時代替教員として働くことも認められている。
つまり、教職への復帰と、以前と同じ働き方へ戻ることは必ずしも一致しない。Victorian Institute of Teaching
学校に戻る前に最大40日間の実習機会
ビクトリア州教育省は、別の支援策として「Teacher Re-Engagement Initiative(TREI)」も設けている。
これは、長期間教職を離れた人が学校環境に慣れるための制度だ。
対象となるのは、原則として12か月以上、継続的な教職から離れていた有資格者。
学校で最大40日間の有給配置を経験し、現役教員の助言を受けながら授業観察や学校活動に参加できる。
受け入れ校が負担する費用は1日330豪ドルで、参加者への支払いと管理費用を含む。330豪ドル全額が参加者本人の日給という意味ではない。
正式な就職を決める前に、現在の学校環境や仕事の内容を確認できる仕組みとなっている。ヴィクトリア州政府
15年ぶりに体育教員として復帰した女性
今回の報道では、15年間教職を離れていたジャッキー・マルディーニさんの事例も紹介された。
マルディーニさんは、ビクトリア州のReservoir East Primary Schoolで体育を教える仕事に復帰した。
復帰の背景には、子どもたちと関わる仕事への思いがあったという。
現在は学校で教える一方、地域の女子オーストラリアンフットボールチームの指導にも関わっている。
VITの2026年第1四半期報告書にも、経験者向け復帰登録制度を早期に利用した教員として、マルディーニさんが紹介されている。
教職から離れていた期間に得た経験を、再び教育の仕事に生かす事例となっている。ヘラルド・サン
教員を辞めた後にも、学校へ戻る道が残る
今回の制度が示しているのは、教職から離れることが、必ずしも教員としての経験を失うことではないという点だ。
教員を辞める理由には、健康、家庭、勤務条件、別の仕事への関心など、さまざまな事情がある。
その後、生活や仕事の条件が変わり、再び教育に関わりたいと考える場合もある。
ビクトリア州では、過去の経験を評価しながら、常勤、非常勤、臨時代替などの働き方を選べる制度が用意されている。
一方、復帰後の勤務条件や精神的負担が以前と比べて改善したかどうかは、今回の登録者数だけでは判断できない。
教職を離れることと、将来もう一度教えることは、必ずしも相反する選択ではない。
今回の動きは、教員本人が退職後の可能性や、教職経験を生かす次の働き方を考える材料となっている。

出典:Herald Sun、2026年10月報道。Victorian Institute of Teaching、2026年7月6日公表資料および9月28日更新資料。ビクトリア州教育省、2026年9月22日更新資料。

