全日本教職員組合(全教)の実習教員部は2026年10月16日、実習教員から教諭へ採用された際、給与上の級と号俸が想定より低くなった事例を公表した。
報告によると、ある県で2026年度の工業科教員採用試験の受験資格が拡大され、一定の条件を満たす実習教員が社会人選考を受験できるようになった。
この制度を利用して実習教員から教諭へ採用された人がいたものの、採用後に適用された給与表は、本人が想定していた2級ではなく1級だった。
さらに、実習教員として働いていた時よりも号俸が下がったという。
全教は、教諭へのキャリアアップを目指したにもかかわらず、給与が下がる問題として取り上げている。
教諭への採用経路が広がった一方で
今回の事例は、工業科の教員採用試験における社会人選考に関係する。
全教によれば、報告のあった県では、これまで実習教員に社会人選考の受験資格が認められていなかった。
しかし、2026年度の採用試験では、一定の基準を満たす実習教員にも受験資格が与えられた。
実習教員として積んできた経験を生かし、教諭として働く道が開かれたことになる。
実習教員は、実験・実習などの場面で教育活動を支える職だ。例えば東京都の実習助手の職務は、高等学校や特別支援学校で実験・実習について教員を補佐するものと説明されている。
ただし、今回の事例の県名は公表されておらず、東京都の制度で発生した問題ではない。
実習教員から教諭への転身は、仕事内容や責任が変わる進路上の選択である。その際、従来の勤務経験が採用後の給与にどのように反映されるかが問題となった。

想定していた2級ではなく1級に
全教の報告では、採用試験の実施要領に、高卒者の給与上の扱いについて明確な記載がなかったという。
採用された本人は、教諭職になることから給与表の2級が適用されると考えていた。
しかし、実際には1級が適用された。
給与担当者は、最終学歴に基づいて計算したと説明したという。
また、本人は、教諭として採用されたにもかかわらず、実習教員時代より号俸が下がったことにも疑問を示している。
ここで区別する必要があるのは、給与表の「級」と「号俸」だ。
級は職務や給与制度上の区分を示し、号俸はその級の中で給与額を決める区分となる。
そのため、級や号俸が変わった場合には、変更前後の実際の給与月額を比較する必要がある。
全教は給与が下がった事例として報告しているが、公開資料には具体的な給与月額や年間収入の差額は示されていない。

県教育委員会は2年半後の2級移行を回答
全教の資料によれば、県教育委員会との交渉では、採用制度と給与の扱いについて説明を求めた。
教職員課からは、前任者が始めた試験であるため分からないという趣旨の回答があったとされる。
その後、県教育委員会との交渉における最終回答として、短大卒の教諭と同様の扱いとし、2.5年で2級になることが示された。
一方、採用時に給与が下がった部分については、全教は今後、人事委員会への措置要求も視野に入れて対応するとしている。
つまり、2級へ移行するまでの扱いについては回答があったものの、採用時の給与低下をめぐる問題が解決したとは確認できない。
また、この回答は全教が公表した内容であり、県教育委員会による独立した公式説明は今回確認できていない。
採用条件と給与条件は別に確認する必要がある
今回の事例で重要なのは、教諭への採用が認められたことと、本人が想定した待遇で働けることは別だという点である。
採用試験の受験資格が広がれば、実習教員にとって新しい進路が生まれる。
しかし、採用後の給与がどのように決まるかによって、実際の生活への影響は異なる。
特に、すでに長年勤務している教職員の場合、これまでの経験年数がどの程度評価されるかは大きな問題となる。
新しい職に就く際には、職名だけでなく、採用後の級、号俸、前職経験の換算方法、将来の昇格条件を確認する必要がある。
今回の報告は、匿名の県における個別事例であり、全国の実習教員が同じ扱いを受けることを示したものではない。
また、給与の扱いが法令や条例に違反していると確定したものでもない。
それでも、採用試験に合格してから給与条件の違いに気づいたという報告は、教員本人の進路判断に関係する。
職務上のキャリアアップと、経済的な待遇改善は必ずしも一致しない。
教職内で新しい仕事を選ぶ場合も、採用条件と給与条件の両方を把握することが必要となる。
出典
全日本教職員組合・実習教員部(2026年10月16日) 「実習教員から教諭(教諭定数枠)へのキャリアUP! なぜ、給料が下がるの?」
東京都教育委員会(2025年6月20日) 「令和7年度東京都公立学校教職員採用候補者選考(実習助手・寄宿舎指導員)について」
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/06/2025062001
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