教員・校長8万2105人が昇進、教職継続の新たな道 -フィリピン-

フィリピン政府は2026年10月5日、公立学校の教員や学校管理職のキャリア形成に関する最新の実績を発表した。

政府によると、拡充された昇進制度「Expanded Career Progression(ECP)」などの取り組みにより、2026年9月までに全国で教員・学校管理職82,105人が昇進した。

この制度の特徴は、教員が昇進するために、必ずしも学校管理職へ転身する必要がないことだ。

授業を担当する教員として専門性を高める道と、学校運営を担う管理職へ進む道が設けられている。

長く教職を続けたいものの、管理職になることを望まない教員にとっても、昇進と待遇改善の機会を広げる制度となっている。Philippine Constant Office

目次

これまでの昇進制度には長い待機期間があった

フィリピン政府は、従来の教員昇進制度について、教員が長期間同じ職位にとどまりやすい問題を指摘している。

2026年10月2日の大統領府発表によれば、以前は「Teacher I」から「Teacher III」へ昇進するまでに10〜20年かかる場合があり、「Teacher III」から「Master Teacher I」への昇進にも同程度の期間を要することがあった。

こうした問題に対応するため、政府はECP制度を整備してきた。

この制度では、教員の職位を拡充するとともに、学校管理職への昇進とは別に、授業を担当し続けながら専門性を評価されるキャリア経路を用意している。

職位の再分類(reclassification)による昇進も導入された。

従来は上位の職位に欠員が生じるまで待つ必要があったが、制度上の資格や能力基準を満たすことで、欠員だけに依存しない昇進の可能性が生まれた。

ただし、経験年数だけで自動的に昇進する仕組みではない。専門能力や勤務実績などの審査が必要となる。Philippine Constant Office

授業を続ける道と管理職になる道

ECP制度では、教員のキャリアを大きく二つに分けている。

第一は、授業を担当する専門職として昇進する道だ。

フィリピン教育省は、Teacher IVからTeacher VIIまでの職位や、Master Teacher Vなどの上位職位を整備した。

教員が教室での仕事を続けながら、専門性や指導力を評価されることを想定している。

第二は、学校運営や管理職へ進む道だ。

校長などの管理職として学校運営に関わるキャリア経路が設けられている。

従来は、昇進を目指すことが授業から離れることにつながりやすかった。

今回の制度では、教室に残ることとキャリアを進めることを両立できる仕組みを目指している。Department of Education

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全国で8万人以上が昇進

政府が2026年10月に公表した実績では、9月までに82,105人の教員・学校管理職が昇進した。

10月2日には、カガヤンバレー地方で4,125人の昇進者や新規採用者の宣誓式も行われた。

ただし、この4,125人には新規採用者も含まれるため、全員を昇進者として扱うことはできない。

また、82,105人についても、教員だけでなく学校管理職を含む数字である。

制度整備そのものは2026年10月に始まったものではない。

2025年には関連法と教育省の実施規則が整備されている。

今回新たに確認できたのは、その制度によるキャリア形成の取り組みが全国規模で進み、9月時点の昇進実績が公表されたことだ。Philippine Constant Office

日本の教員にとっての判断材料

フィリピンの制度は、日本の教員が直接利用できるものではない。

日本の公立学校教員の任用、昇進、給与制度は、国内の法令や自治体の制度によって決まる。

そのため、フィリピンで8万人以上が昇進したことから、日本でも同じような昇進が可能だと判断することはできない。

一方、教員本人が今後の働き方を考えるうえで、比較できる論点がある。

昇進するために、授業を担当する仕事から離れる必要があるのか。

授業を続けたい教員にとって、管理職への転身が唯一の昇進経路であれば、仕事への希望と待遇改善が対立することがある。

フィリピンの制度は、教室で働き続ける教員の専門性を評価し、管理職とは別の昇進経路を整備した事例だ。

これは、教員を続けるか辞めるかという二者択一だけでなく、教職の中でどのような役割を担うかという選択にも関係する。

ただし、制度があることと、希望する教員全員が昇進できることは別だ。

昇進人数という実績は確認できたが、申請者のうち何割が昇進したのか、地域や職位によってどの程度差があるのかまでは、今回の発表だけでは分からない。

教員本人の進路を考える際には、退職や転職という選択肢だけでなく、現在の専門性を生かしたまま役割や待遇を変えられる制度があるかどうかも判断材料となる。

出典

フィリピン大統領府(2026年10月5日)
PBBM vows more benefits, career opportunities for teachers

フィリピン大統領府(2026年10月2日)
President Marcos graces mass oath-taking of over 4,000 newly promoted teachers in Region 2

フィリピン教育省(2025年9月11日)
DepEd, pinagtibay ang bagong sistema para sa promosyon ng guro

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