エストニアとラトビアの地方自治体で、学校にも仕事にも職業訓練にも参加していないNEETの若者を、映像制作を入口に教育や仕事へつなぐ「NEET-TO-MEDIA」が動き始めている。
エストニアのJõelähtme自治体は2026年9月21日、17〜29歳の若者を対象とした研修プログラムを案内した。対象としているのは、現在、仕事や学業の間にいる若者、そこから一時的に離れている若者、あるいは「次に何をするか」を探している若者である。研修は2027年第1四半期に実施する予定となっている。Jõelähtme vald

この事業は、EUのInterreg Central Baltic Programmeの支援を受け、エストニアのJõelähtme自治体とラトビアのValmiera自治体が共同で進めている。事業期間は2026年5月から2027年10月までで、NEETまたはNEETになるリスクのある若者20人を対象に、両自治体で10人ずつ研修・認定する計画だ。Central Baltic
特徴は、一般的な就職講座から始めないことにある。
参加者は、撮影、映像編集、音声制作、デジタルコンテンツ制作などを実際に経験する。最終的には自分たちで映像作品を制作する。さらに、履歴書作成、面接練習、デジタル上での自己表現、企業との接点なども組み合わせる。10以上の企業がメンタリングや職場体験などに関わる計画となっている。Central Baltic
ラトビアのValmiera自治体では、18〜29歳のNEETまたはそのリスクがある若者を対象に、2027年1月から4月まで映像制作の研修を行う。エストニアとラトビアを行き来する研修、就職面接への準備、地域企業での実習も組み込まれている。Izglītība Valmieras novadā
ここで重要なのは、映像制作そのものだけではない。
事業側は、NEETの若者の中には内向的で、自分自身を公の場で表現することに抵抗を持つ人がいることを前提としている。そのため、自分を直接売り込むことから始めるのではなく、映像を通じて自分の視点や身の回りの世界を表現する方法を採用している。制作を通じてコミュニケーション、自信、共同作業、デジタル技能を身につける設計である。Central Baltic
さらに、この取り組みでは「映像作品を完成させること」と「映像制作の過程を学習経験として使うこと」を分けて考えている。2026年7月の事業開始会議でも、完成作品だけを目的にせず、制作過程そのものから若者が新しい技能や自信を得られるようにすることが検討された。Central Baltic
その先には、教育への復帰、就職、クリエイティブ分野での雇用、自営業という複数の進路が置かれている。つまり、NEET状態から一気に「就職」だけへ移すのではなく、まず興味のある活動を試し、技能を身につけ、人や企業と接点を持ち、その経験から次の方向を探す構造である。
日本で使われる「ニート」と、この事業が対象とするNEETは完全に同義ではない。また、ひきこもりを直接対象とした事業でもない。一方、社会的孤立やメンタルヘルスの問題など複数の障壁を抱え、教育・仕事・訓練から離れている若者も想定されている。Central Baltic
学校や仕事から離れた後、「次は就職するのか」「学び直すのか」「何かを試してから考えるのか」という進路は一つではない。
NEET-TO-MEDIAが置いているのは、その決定より前の「実際にやってみる場所」である。映像制作という具体的な活動から始め、学習、企業との接点、実習を経て、その後の教育・就労・自営まで複数の出口を残している点が特徴となる。
出典
Jõelähtme自治体「NEET-to-Media研修プログラム」
Central Baltic Programme「NEET-TO-MEDIA」
Valmiera自治体「NEET-TO-MEDIA」

