子ども主導の遊びを含む養育経験、成人後の幸福と関連-日米英-

子どもが自分で遊びを考え、友達と遊ぶ時間。親が子どもの気持ちに応じて関わる経験。

こうした子ども時代の経験は、大人になってからの幸福感や人間関係と、どのようにつながっているのか。

2026年9月30日、英国ノッティンガム大学などの研究チームが、日本、米国、英国の成人を対象とした研究を学術誌『Journal of Happiness Studies』に発表した。

分析対象は18〜34歳の1,401人。

研究では、子ども時代の養育環境について振り返ってもらい、現在の幸福感、生活満足度、他者との関係、社会的な信頼などとの関連を調べた。

その結果、子どもが自分で進める遊び、親や養育者の応答的な関わり、家庭内の肯定的な感情経験などを含む養育環境が、3か国で成人後の幸福感や人間関係の良好さと関連していた。

日本・米国・英国の成人1,401人を分析

研究を行ったのは、ノッティンガム大学のEugene Malthouse、大阪大学の花木伸行、ウォーリック大学のGordon D. A. Brownである。

調査は2024年に実施された。

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米国と英国では9〜10月、日本では12月に参加者を募集した。

対象者は18〜34歳で、0〜18歳の子ども時代を振り返って回答した。

研究では、年齢、性別、現在の収入、本人と親の教育歴、子ども時代の経済状況などを考慮して分析している。

日本と欧米では家庭文化や子育て観が異なる。それでも、子ども時代の肯定的な経験と成人後の幸福感の間には、共通した関連が確認された。

親の支援だけでなく「子どもが自分で遊ぶ経験」も調査

研究では、人間の成長を支える養育環境を「Evolved Nest(進化的な養育環境)」という枠組みで捉えた。

具体的には、親や養育者が子どもの必要に応じて対応すること、愛情のある身体的接触、家庭の肯定的な雰囲気、周囲の人々とのつながり、子ども主導の遊びなどが含まれる。

子ども主導の遊びについては、あらかじめ大人が企画した活動ではなく、子ども同士が自分たちで遊びを組み立てる経験を尋ねた。

屋内と屋外の双方について質問している。

これは、親が子どものために遊びを用意することとは異なる。

何をするか、どのように遊ぶかを子どもたち自身が考える経験である。

ただし、研究はこれらの養育経験を組み合わせて分析しており、自由な遊びだけの独立した効果を確定したものではない。

肯定的な経験と成人後の幸福感に関連

分析では、子ども時代の養育経験が豊かだったと回答した人ほど、成人後の幸福感や生活満足度が高い傾向が確認された。

人間関係についても、他者への信頼、周囲への帰属意識、人間関係の満足度などとの関連が見られた。

研究チームは、子ども時代の経験を肯定的な経験と否定的な経験に分けて分析した。

その結果、成人後の幸福感や人間関係との関連は、多くの指標で肯定的な経験の方が強かった。

つまり、否定的な経験を避けることだけでなく、子ども時代に肯定的な経験があることも、成人後の状態と関係していた。

日本では人間関係の満足度とも関連

日本の参加者についても、肯定的な養育経験と現在の生活満足度や人間関係との関連が確認された。

特に、人間関係への満足度や他者への信頼などとの関連が見られた。

一方、研究では、実際の行動を伴う経済ゲームも実施した。

その結果、子ども時代の養育経験と、ゲーム内で測定した向社会的な行動との間には、全体として一貫した関連が確認されなかった。

本人が回答する幸福感や他者への信頼と、実際の行動は同じではない。

この違いも今回の研究結果の重要な点である。

親が整える環境と、本人が決める経験

今回の研究には、親が担う役割と、子ども自身が担う役割の両方が含まれている。

親は、子どもが安心して過ごせる環境を整え、必要に応じて支える。

一方、子どもは、その環境の中で自分の遊びを考え、他者と関わり、活動を進める。

例えば、親が安全に遊べる場所を確保することと、その場所で何をして遊ぶかを子どもが考えることは、別の役割である。

親がすべてを決める必要はなく、子どもにすべてを任せる必要もない。

親が担う安全確保と、本人が担う選択や行動を分けて考えることができる。

ただし、今回の研究は、こうした役割分担が子どもの自己決定能力を高めるかどうかを直接検証したものではない。

子ども時代の経験を成人後から振り返った研究

今回の研究には注意点もある。

調査対象は現在の子どもではなく、18〜34歳の成人である。

子ども時代の経験は本人の記憶に基づいており、実際の養育行動を長期間追跡したものではない。

また、観察研究のため、肯定的な養育経験が成人後の幸福を直接引き起こしたとは断定できない。

それでも、日本を含む3か国で、子ども時代の肯定的な経験と成人後の幸福感や人間関係に共通した関連が確認された。

子どもを支えることと、子ども自身が活動を進める機会を持つこと。

その両方を養育環境の一部として捉えた研究となっている。

出典: Malthouse, E., Hanaki, N. & Brown, G. D. A. “The Evolved Nest in Childhood: Relation to Adult Well-being and Social Capital Across Cultures.” Journal of Happiness Studies, 2026年9月30日公開。

https://doi.org/10.1007/s10902-026-01109-0
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