米国アラスカ州のコディアック島で、海外から採用した教員の「採用後」に焦点を当てた動きが出ている。
2026年10月2日、アラスカ州コディアックの公共ラジオ局KMXTは、コディアック島郡学区が今学年度、ほぼすべての教員ポストを埋めたと報じた。学区側は、海外教員を採用するH-1Bビザ制度と、採用した教員の永住権取得を支援する取り組みが、教員の定着に寄与していると説明している。KMXT
海外教員26人、教員のおよそ6人に1人
同学区では2022年からフィリピンを中心に海外教員の採用を進めてきた。
現在、H-1Bビザで勤務する海外教員は26人。これは学区の教員のおよそ6人に1人に当たり、すべての学校に配置されている。

H-1Bは一定の条件のもとで米国に滞在し就労できるビザで、報道によると学区はビザ申請に伴う法的費用も負担している。KMXT
学区の人事部門も、教職員の採用だけでなく「retaining=定着」を役割として明示している。現在の福利厚生には医療・歯科・眼科保険、退職制度、授業料補助、従業員支援プログラムなどが含まれる。Kodiak Island Borough School District
「採用する」から「ここで働き続けられる」へ
特徴的なのは、海外から教員を呼ぶことだけで終わっていない点だ。
KMXTによると、同学区では海外教員の永住権取得を支援する方向へ取り組みを進めている。
学区のDamon Hargraves暫定教育長は、通常の年なら夏を通して教員採用に追われるが、今年は長期代替教員を置いている1件を除き教員を確保できたと説明した。自身が勤務した15年間でも記憶にない状態だとしている。KMXT
つまり、人員不足に対して毎年新しい教員を補充するだけではなく、すでに働いている教員が数年後もその地域で生活し、仕事を続けられる条件をつくる方向へ移っている。
同じ学区内で職種を変える仕組みもある
コディアック島郡学区には、現在働いている教職員が学び直しながら別の役割へ移る仕組みもある。
「Grow Your Own」では、一般教育の教員が特別支援教育の資格を取得し、同学区の特別支援部門へ移るルートを用意している。
また、教員ではないパラプロフェッショナルが、学区で働きながらアラスカ大学アンカレッジ校のプログラムで学び、教員免許取得を目指すTeacher Apprenticeshipもある。Kodiak Island Borough School District
これは「教員を続ける/辞める」という二択とは異なる。
同じ教育分野に残りながら、資格を追加する。職種を変える。勤務地を変える。雇用や在留の条件を整えて継続する。
働き方の条件そのものを変える進路が存在している。
継続できるかは本人の意思だけでは決まらない
SK進路の対象となる、メンタル不調などを経験した後に仕事と生活を再設計する場面でも、この視点は重要になる。
「教員を続けたいか」という本人の気持ちだけを確認しても、進路は決まらない。
勤務時間、仕事内容、職種、勤務地、収入、雇用形態、資格、家族との生活など、続けるための条件を分解する必要がある。
今回の事例では、海外教員にとって在留資格という非常に大きな生活条件まで、定着策の一部となっている。
もちろん、アラスカ州の島しょ部という特殊な地域の事例であり、日本の教員制度へそのまま置き換えることはできない。
それでも、「教員として残るか、辞めるか」だけではなく、何が変われば教員として続けられるのかを具体的な条件から考える材料になる。
教員本人の進路は、職業名だけでなく、仕事と生活を成立させる条件の組み合わせとして比較する必要がある。
出典:KMXT、2026年10月2日公開。コディアック島郡学区公式情報も確認。KMXT
KMXT「KIBSD credits visa, green card programs for low teacher turnover」

