ニュージーランド政府は2026年9月2日、無償で家族などを支える介護者のための新たな行動計画「Mahi Aroha Carers’ Strategy Action Plan」を公表した。社会開発省は9月7日、計画を承認した閣議資料も追加公開した(政府発表、閣議資料公開ページ)。計画が特徴的なのは、介護中の休息や生活支援だけでなく、介護中と介護後の就労、職業訓練、教育への道筋を政策課題として明記した点である。
計画が対象とする「介護者」は、障害、加齢、心身の病気、けが、終末期などを理由に、家族、親族、友人らを無償または非公式に支える人だ。フルタイムか一部の時間か、一人で担うか家族などと分担するかを問わない。社会開発省は国内の介護者を50万人超、過少把握の可能性を含めると最大100万人と見積もる(行動計画掲載ページ)。2022年時点の無償介護の経済的な貢献は年176億ニュージーランドドルと推計された。認知症に限っても、無償介護を有償労働に置き換えた場合の費用は2020年の年11億9,000万ドルから2050年には28億ドルへ増えるとの推計が示されている。

新計画は、①健康と心身の状態、②経済的安定、③認知と評価の3分野に、監視・評価を加えた構成で、計9項目の行動を掲げる。政府発表によると、2025年11月から2026年3月までの意見募集では、オンライン調査と意見提出を合わせて約600件が寄せられた。従来の期限付き計画と異なり、今回の計画には終了年を設けず、状況に応じて更新する。
「尽くしすぎた後の大人」と最も接点があるのが、経済的安定の分野にある「技能・教育・就労」だ。計画は、介護中と介護後の訓練・学習について的を絞った支援を受けられる状態を目標に置く。最初の1〜3年では、介護中または介護後に有給の仕事、訓練、教育へ入るため、現在どのような支援や機会があるかを政府が点検する。介護休暇など、介護者に配慮する雇用主の取り組みも調べ、次の施策に生かす方針だ。
ほかにも、休息支援の全国的な一覧と不足地域・分野の把握、利用できる公的な金銭支援の水準・対象・抜け漏れの整理、支援窓口への案内改善、2027年の全国介護者デー、評価の枠組み、介護者を把握する行政データの仕組みづくりを初期の仕事としている。
ただし、今回は新しい給付、職業訓練、再就職制度が直ちに始まるという発表ではない。開始段階は既存予算の範囲で進め、新制度や既存制度の拡充に費用が必要になれば、将来の予算編成で検討する。成果指標、政府の報告頻度、外部関係者の関与方法も、後日改めて閣議に示す予定だ。就職者数や収入改善などの成果はまだ確認できない。
介護の役割が軽くなったり終わったりした後、以前の仕事へ戻る、別の仕事を試す、学び直す、地域活動を担うといった選択肢を考えるには、介護中に失った時間や経験を「空白」として扱わない仕組みが必要である。今回の計画はその入口を政策上に置いた。ただし、実際に使える支援へ変わるかどうかは、今後1〜3年の点検結果、予算、具体策、公開される成果データで見極める必要がある。
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