英国で、教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していないNEETの若者を、まず短期間の職場経験につなぎ、その後の仕事へ移行させる取り組みが広がっている。
英国政府は2026年9月8日、大手小売企業と連携し、18〜24歳の若者に職場経験を提供する新たな取り組みを発表した。参加企業にはJohn Lewis、Currys、Costa Coffeeなどが含まれ、小売業界全体では現在の議会任期終了までに若者向けの仕事を最大10万件つくる目標を掲げている。GOV.UK
背景には、英国で約100万人の16〜24歳がNEET状態にあることがある。

NEETは「Not in Education, Employment or Training」の略で、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない若者を指す。日本の「ひきこもり」と同義ではなく、外出している人や仕事を探している人も含まれる。
一方で、仕事をしていない期間が長くなれば、次の仕事へ移るための経験そのものを得にくくなる問題がある。
2026年9月30日付の英紙The Guardianは、英国のNEET問題について、24歳のNEETの45%が一度も仕事を経験していないと指摘した。また、NEETの84%は働く意思があるとされる一方、若者が最初に経験しやすい飲食・接客などの仕事の機会が減少している。2024年から2025年にかけて、ホスピタリティ分野の臨時求人は25%減少したという。The Guardian
つまり、「働きたいかどうか」だけでは説明できない。
仕事をした経験がなければ、自分にどのような仕事が合うのか、職場で人とどう関わるのか、決められた時間に働き続けられるのかを実際に確認する機会も少なくなる。
今回の小売業界との連携では、この「最初の仕事」の前に職場経験を置く。
政府発表では、若者が実際の職場で経験を積み、技能や自信を身につけ、その後の雇用につなげることを目的としている。単なる求人紹介ではなく、実際の仕事を試す機会を入口にする考え方である。GOV.UK
英国では、このほかにもNEET状態の若者を教育・訓練・仕事へ再接続する仕組みを拡大している。
政府のYouth Guaranteeでは、若者が教育、訓練、見習い、就労支援などへつながる仕組みを地域単位で試行している。現在、Liverpool City Region、West Midlands、Tees Valleyなど8地域で「Trailblazer」が進められ、NEETになる可能性の高い若者を早期に見つけ、教育・訓練・仕事へつなぐ方法を検証している。House of Commons Library
さらに7月には、25歳未満の対象者に対する見習い訓練の無償化や、企業が若い見習いを雇用する際の支援などを含む施策も発表された。政府は、学校から大学だけではなく、専門教育、職業訓練、見習い、仕事へ複数の進路をつくる方針を示している。GOV.UK
ここで重要なのは、NEET状態からの進路を「就職するか、しないか」だけで考えていない点である。
職場を経験する。自分に合うか確かめる。技能を身につける。必要なら訓練や見習いへ進む。その後に継続的な仕事へ移る。
学校や仕事から離れた若者にとって、この中間段階が「この先どうするか」を判断する材料になる。
NEET状態の若者の中には、すでに進みたい方向が決まっている人もいれば、仕事を経験したことがなく、何を選べばよいか分からない人もいる。
英国で進む取り組みは、後者に対して、考えるだけではなく実際に仕事を試してから次を選ぶ入口を広げる動きである。
出典
英国政府「Retailers target 100,000 jobs for young people」
英国政府「Government invests in young people with more opportunities close to home」
英国議会図書館「Youth Guarantee」

