子どもが成長するにつれて、親はどこまで判断に関与し、どこから本人へ渡していくのか。
2026年9月22日、学術誌『Social Development』に、9か国・12の文化圏で親の「心理的統制」が思春期にどう変化するかを追跡した研究が公開された。対象は1,338人の子どもの母親と父親。子どもが12歳から16歳になるまで5回にわたりデータを収集した国際共同研究である。Wiley Online Library
対象地域には、コロンビア、イタリア、ヨルダン、ケニア、フィリピン、スウェーデン、タイ、米国、中国が含まれる。アジアだけでなく、欧州、北米、南米、アフリカ、中東を含む比較となっている。Wiley Online Library

多くの地域で、子どもの成長とともに統制が低下
研究が調べたのは、単純なルール設定や見守りではなく「心理的統制」である。
心理的統制とは、罪悪感を持たせる、愛情を条件にする、本人の考えや感情へ侵入するなど、子どもの心理的な自律性に干渉する親の関わりを指す。
分析の結果、多くの調査地域で、母親・父親ともに子どもが12歳から16歳へ成長するにつれて心理的統制が直線的に低下していた。一方、一部の地域では大きく変化せず、一定水準を維持していた。Wiley Online Library
つまり、思春期に入っても親の関与が突然なくなるわけではないが、多くの文化圏で「親が心理的に動かす」度合いが徐々に小さくなる傾向が確認されたことになる。
家族への義務を重視する父親では低下が緩やか
研究では、思春期の身体的成熟だけでなく、親が「家族への義務」をどの程度重視しているかとの関係も調べた。
12歳時点の思春期の発達状況は、父親の心理的統制の水準と一部地域で関連しただけで、全体を説明する強い要因ではなかった。
これに対し、父親が家族への義務を強く重視している場合、全調査地域を通して心理的統制が低下する速度は緩やかだった。Wiley Online Library
研究は、親の関わり方が子どもの年齢だけで機械的に変わるのではなく、家族に何を求めるかという価値観とも関係していることを示している。
「親が決める」役割をいつ変えるのか
この結果は、SK進路×子育て講座で扱う「親が選ぶ→本人と考える→責任を渡す」という構造と直接接続する。
幼い時期には、危険を避ける、生活を整える、教育環境を選ぶなど、親が決めなければならない領域が大きい。
しかし12歳、14歳、16歳と成長しても、親が同じ方法で本人の判断を動かし続ける必要があるとは限らない。
重要なのは「親が関わるか、関わらないか」という二択ではない。
情報を集める。
選択肢を示す。
本人の考えを聞く。
一緒に比較する。
最終的な判断を本人へ渡す。
成長に応じて、親の役割そのものを変えていくことができる。
今回の研究は、親が子どもへどの程度の権限を渡すべきかを直接実験したものではなく、心理的統制の変化を追跡した観察研究である。そのため、「統制を減らせば主体性が高まる」と今回の結果だけから因果関係を断定することはできない。
それでも、9か国・1,338人を12歳から16歳まで追った結果、多くの文化圏で親の心理的統制が成長とともに低下していたことは、親子の役割が固定されたものではないことを示す材料になる。
子どもが成長するとは、本人ができることが増えるだけではない。
それまで親が持っていた判断や責任の一部を、本人へ移していく時期でもある。
出典:Alampay et al., Social Development, 2026年9月22日公開。Wiley Online Library

