子どもの将来を考え、親が熱心に関わる。学校のことを把握し、失敗しないよう先回りし、できるだけよい環境を用意する。
その関わりが強くなる背景には、親自身が周囲から受ける「よい親でいなければならない」という圧力が関係している可能性がある。
2026年9月11日、学術誌『Family Process』に、ベルギーの思春期の子どもを持つ親を対象にした研究が公開された。対象は母親276人、父親142人の計418人、330家庭。子どもの平均年齢は16.35歳で、大半が16~17歳だった。Wiley Online Library
研究チームが調べたのは、親が社会やメディア、他の親などから感じる「完璧な親であることへの圧力」と、過保護・統制的な子育てとの関係だ。
「もっと子どもに関わるべき」という圧力
研究では、現代の親には、子どもの成長へ多くの時間やエネルギーを投入し、学校生活を把握し、活動を管理し、「子どもにとって何が最善か」を常に知っていることまで期待される傾向があると整理している。
こうした期待は、伝統的なメディアやSNS、他の親、社会全体など複数の経路から届く。
研究参加者には、こうした外部から「完璧な親であること」を求められているとどの程度感じているかを尋ねた。Wiley Online Library
その結果、社会からの圧力を強く感じていることは、母親・父親の双方で過保護の多さと関連していた。
さらに父親では、社会的圧力の高さと、学業面での統制的な子育てとの関連も確認された。Wiley Online Library

子どものために動くことが、過保護へ変わる
研究でいう「過保護」とは、子どもの発達段階や能力に比べて、必要以上に保護する関わりを指す。
「統制的な子育て」は、親が侵入的・操作的な方法によって子どもの行動を動かそうとする関わりで、今回の研究では特に学業領域が調べられた。Wiley Online Library
ここで重要なのは、過保護が単純に「親が子どもを信用していないから起こる」と捉えられていない点だ。
研究では、現代の親に対して「子どもの成功に責任を持つべきだ」「十分に関与すべきだ」という社会的期待が強まることで、親が子どもの生活へ過剰に関わる可能性を検討している。
つまり、子どもを放置した結果ではなく、むしろ「きちんと親をやろう」とすることが、関与しすぎる方向へ動く場合があるということだ。
「子どもの成功=親の成功」になるとどうなるか
研究ではもう一つ、親が自分自身をどの程度「子どもとの関係」によって定義しているかも調べた。
母親では、子どもとの関係を自分自身の重要な一部として捉える傾向が強いほど、過保護と統制的な子育ての双方が多いという関連が確認された。
一方、研究チームが予想していた「子どもとの一体感が強い親ほど、社会的圧力の影響をさらに受けやすくなる」という相互作用については、証拠は得られなかった。Wiley Online Library
研究は横断的な調査であり、「社会からの圧力が過保護を引き起こした」と因果関係を確定したものではない。また、参加者はベルギーのフランス語圏に住む親で、高学歴層が多いという制約もある。Wiley Online Library
親が担う責任そのものを見直す
この研究は、SK進路×子育て講座の「親が選ぶ→本人と考え責任を渡す」という考え方と別の角度から接続する。
親から子どもへ責任を渡しにくい理由は、子どもの能力だけにあるとは限らない。
「失敗させてはいけない」
「進路を間違えさせてはいけない」
「親なら学校のことまで把握すべきだ」
こうした責任を親自身が背負っていれば、子どもが自分で判断できる年齢になっても、親が仕事を手放しにくくなる。
親子の役割分担を考える場合、「子どもに何を任せられるか」だけでなく、そもそも親が自分の仕事だと思っているものの中に、本来は本人へ渡してよいものがないかという視点も必要になる。
今回の研究は、親の関与を単純に減らすべきだと示したものではない。親の支援が必要な場面は残る。
ただし、子どもの成功を親の責任として抱え込むことと、本人が成功や失敗を経験できるよう支えることは同じではない。
「よい親だから多くを担う」だけではなく、「本人が担えるものを本人へ返す」。
親子の役割移行を考えるうえで、親側の責任の持ち方も検討対象になる研究である。
出典:Selçuk S, Nunes CE, Lamprianidou EA, Mouton B, Van Petegem S. The Role of Perceived Societal Pressure and Parents’ Child-Oriented Self-Construal in Overprotective and Controlling Parenting in Belgian Parents of Adolescents. Family Process. 2026年9月11日公開。Wiley Online Library

