オーストリアで、教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していないニート状態の若者に対し、「就職できたか」だけではなく、本人が何を成功と考えるかまで支援評価に取り入れる取り組みが進んでいる。
舞台はニーダーエスターライヒ州ウィーナー・ノイシュタット。18〜24歳のNEETを対象とする「Job-In」というプロジェクトだ。2025年8月に始まり、2027年7月まで実施される。既存の就労支援や社会制度につながっていない若者も対象にしている。ノエル

2026年9月17日に開かれたオーストリア青年研究会議では、このJob-Inを対象とした参加型評価の取り組みが報告された。
特徴的なのは、支援機関側だけで成果指標を決めていないことだ。
参加者自身に「このプロジェクトへの参加が、自分にとって成功だったと言えるのはどんな時か」「ここでの時間に何を望むか」を尋ね、その回答をもとに個人ごとの目標達成を測る仕組みを作っている。評価対象も就職や進学だけではなく、感情面の安定、社会とのつながり、自分で行動できる感覚、日常生活を整える力まで含めている。FHWN
Job-In自体も、一般的な就職相談とはかなり異なる。
若者は決められた曜日や回数で通う必要がない。「Open Space」と呼ばれる場所へ好きな時に立ち寄ることができ、参加も任意である。料理、ゲーム、スポーツ、創作活動、応募書類づくりなどを通じ、自分の興味や得意なことを探していく。Fab
支援者側から来所を待つだけでもない。
Instagram、TikTok、WhatsAppなどを使った「Digital Streetwork」と、駅や公園などでの従来型のアウトリーチを組み合わせ、既存の支援制度と接点を失っている若者へ働きかける。European Social Fund Plus
背景には、従来の支援制度そのものへ入りにくいNEET層の存在がある。
欧州社会基金の事例紹介では、対象者には社会的孤立、メンタルヘルス上の問題、不安定な住居、学歴の不足、支援機関への不信など複数の問題を抱える人がいるとされている。従来の制度は、自分で予約し、決まった時間に通い、一定の意欲を示すことを前提にしがちだ。その段階にまだ達していない若者ほど制度から離れやすい。European Social Fund Plus
そのためJob-Inでは、「すぐ就職させる」のではなく、社会との接点をつくり、生活のリズムを取り戻し、本人の興味を確認し、その後に教育、職業訓練、就労などへ段階的につなぐ。
実際、プロジェクトに参加したウクライナ出身の若者が、個別の進路相談、応募準備、面接練習などを経て、オーストリア連邦鉄道ÖBBの見習い職に採用され、2026年9月から開始する事例も紹介されている。Job-In側は採用後も本人との連絡を続けている。European Social Fund Plus
ここで重要なのは、この1人の就職成功だけではない。
Job-Inでは、活動内容や空間づくり、月ごとの企画まで若者本人が決定に参加する。つまり「支援する側が進路を決め、本人をそこへ乗せる」のではなく、本人が支援の使い方や次の方向を選ぶ構造になっている。FHWN
ニート状態からの進路を考える場合、「就職したか」「学校へ戻ったか」だけでは、その途中にある変化が見えにくい。
家から外へ出る。人と話す。生活を整える。自分の興味を知る。何かを試す。そして、仕事、訓練、学び直しなどから次を選ぶ。
オーストリアのJob-Inは、その途中も含めて本人の進路として扱い、さらに何を成功とするかまで本人と一緒に決める支援を試している。
出典
欧州社会基金+「Job-In」事例
ニーダーエスターライヒ州 Job-In事業概要
ウィーナー・ノイシュタット応用科学大学 2026年9月17日発表
FAB Job-In利用案内

