辞めた教員58人、「声を聞いてもらえない」が離職を加速-スコットランド-

教員が学校を離れるまでには、「辞める」と決める一瞬だけでなく、その前に積み重なる過程がある。

スコットランドで、実際に教職を離れた、または勤務時間・役割を減らした教員58人を調べた新しい研究が、学校管理職の対応がその過程にどう関わったかを分析した。

研究は2026年9月3日、学術誌『Educational Management Administration & Leadership』にオンライン公開された。対象は定年前に自ら教職を離れた、または仕事を縮小した教員で、解雇、余剰人員整理、重病など本人の選択によらない離職は除外されている。 Sage Journals

58人のうち32人は教職を完全に離れ、26人は教員を続けながら勤務時間や責任を減らしていた。教職経験は1~35年、中央値は18年だった。研究者は2025年2~5月に一人30~90分のインタビューを実施し、「何が辞めるきっかけになったか」「辞める、または仕事を減らす考えを誰かに話したか」「何があれば残った可能性があったか」などを聞いた。 Sage Journals

結果では、36人、62.1%が、学校管理職の対応が離職や仕事縮小を加速させたと振り返った。

反対に、管理職の支援によって離職が一時的に遅れたとした教員は6人、10.3%だった。11人は管理職とは独立した要因で離職し、5人は管理職の影響を肯定・否定の両面から捉えていた。 Sage Journals

特に目立ったのが、管理職との「関係的信頼」である。

58人中52人、89.7%が、尊重されること、自分の意見を聞いてもらうこと、個別事情への配慮という三つのうち、少なくとも一つで否定的な経験を報告した。

なかでも「声を聞いてもらえない」という問題が大きかった。管理職に本当に話を聞いてもらえたと感じた教員は2人だった一方、35人、60.3%が、自分の意見が抑えられたり、相談しても実質的に反映されなかったりした経験を語った。 Sage Journals

勤務条件への対応も進路を左右していた。

ある小学校教員は、退職を避けるため自ら柔軟な勤務方法を考えて管理職に提案したが、学校の都合に合わないとして認められず、最終的に退職届を出したと説明している。

一方、支援的な管理職によって離職を遅らせた6人は、厳しい勤務条件のなかでも関係的信頼を保っていた。研究は、管理職が制度上の問題をすべて解決できなくても、本人の事情への対応や柔軟性、時間の保護、相談への応答によって、負担が「まだ続けられるもの」になるか「もう続けられないもの」になるかが変わり得ると分析している。 Sage Journals

この研究が特徴的なのは、「辞めたいと思っている教員」ではなく、実際にその後の行動を変えた教員を対象としている点だ。

しかも、選択肢を「残る/辞める」の二つにしていない。

26人は教職を完全には離れず、勤務時間や責任を減らして残った。

これは教員本人の進路を考えるうえでも重要な点となる。

復職するか。今のまま続けるか。勤務を縮小するか。役割を変えるか。異動するか。退職するか。教職そのものを離れるか。

今回の研究では、離職は本人の気持ちだけで突然決まるのではなく、職場からどのような対応を受けるかによって、その速度や最終的な形まで変わる可能性が示された。

「教員を続けられない」と感じたとき、教員という仕事そのものが続けられないのか、現在の学校・勤務条件・役割・人間関係では続けられないのかを分けて考える必要がある。

完全に辞める前に、条件を変えて残る余地がある場合もある。

58人の実際の進路を追った今回の研究は、その中間にある選択肢が、本人だけではなく職場側の対応によって閉じることも、残ることもあると示している。

出典
Hulme, M. et al., “Thresholds of persistence: How leadership practices shape teachers’ withdrawal trajectories”, Educational Management Administration & Leadership, 2026年9月3日。 Sage Journals

原著論文

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