スコットランドで、教員が実際に教職を離れたり、勤務時間や責任を大幅に減らしたりした過程を追った新しい研究が公表された。
2026年9月3日、学術誌『Educational Management Administration & Leadership』にオンライン掲載された研究である。対象は、定年前に教職を離れた、または勤務時間・職責を大幅に減らした教員58人。32人は教職を離れ、26人は仕事を縮小して教職に残っていた。教職経験は1~35年、中央値は18年である。

研究が注目したのは、単に「なぜ辞めたのか」ではなく、辞めるまでの過程で学校管理職の対応がどう作用したかである。
58人のうち36人、62.1%は、管理職の対応が離職や仕事の縮小を早めたと振り返った。一方、6人、10.3%は、管理職の支援によって離職が一時的に遅れたとしている。11人は管理職とは別の要因、5人は良い面と悪い面の両方があったと回答した。
特に大きな差が出たのが、「自分の声を聞いてもらえるか」という点だった。
管理職に本当に話を聞いてもらえたと感じた教員は2人にとどまり、35人、60.3%は否定的な経験を報告した。研究では、個人的な事情への配慮、勤務時間外の仕事、授業以外の時間の確保、柔軟な働き方、生徒の行動上の問題が起きた際の支援なども、離職までの過程に関係していた。
例えば、仕事を続けるために柔軟な勤務方法を自ら考えて提案したものの認められず、退職を選んだ教員がいた。治療のために必要な時間を以前の管理職には確保してもらえていたが、管理職が代わった後に授業を配置され、治療と仕事のどちらかを選ばざるを得なくなった教員もいた。
反対に、家庭事情などに合わせて具体的な勤務上の工夫を行った管理職については、その対応が教員を職場にとどめる方向に働いていた。
ただし、研究結果は「良い管理職がいれば辞めない」という単純なものではない。
支援的な管理職によって離職が遅れた6人も、最終的には全員がフルタイムの常勤職には残らなかった。管理職が業務量、人員不足、生徒対応などの構造的な問題そのものを解決できるわけではないためだ。
研究者らが示したのは、管理職が離職を直接決めるというより、教員が「ここまでは続けられる」と感じる限界点を動かしている可能性である。
これは教員本人の進路を考えるうえでも重要な違いとなる。
教員を辞めたいのか。
今の学校では続けられないのか。
今の勤務時間では続けられないのか。
役割を減らせば続けられるのか。
異動や柔軟な勤務が可能なら残りたいのか。
これらは同じ問題ではない。
研究では、勤務時間や責任を減らした26人も対象にしている。つまり、「残った教員」と「辞めた教員」だけでは実態を捉えられない。表面上は在職していても、勤務時間を減らすことが持続可能な働き方への変更ではなく、退職へ向かう途中段階になっている場合もある。
同じ研究チームが8月に公表した別の研究では、教職を完全に離れた36人のうち25人、69.4%が、教える仕事への思いを持ちながら、勤務条件が持続できなくなって離れた「reluctant leavers」に分類されている。
「教員を辞めた」という結果だけを見れば、自分から選んだ退職に見える。
しかし、その前には、続けたい気持ち、勤務条件、管理職との関係、健康や家庭事情、勤務時間の縮小、異動の可能性など、複数の判断が積み重なっている。
今回の研究は、教員本人の進路を「続けるか、辞めるか」の二択ではなく、その間にある選択肢まで見る必要性を示している。
出典
SAGE Journals「Thresholds of persistence」(2026年9月3日)
Oxford Review of Education「Teacher turnover in Scotland」(2026年8月7日)

