教員が学校を移るほど残る教員の負担が増える -オーストラリア-

オーストラリアで、教員不足を「教職を辞める人」だけではなく、「学校から学校へ移る人」まで含めて捉えた新しい研究が公表された。

2026年9月11日、『The Australian Educational Researcher』に掲載された研究である。研究者は、教員確保が難しい3つの中等学校を対象に、教員・学校管理職への19回の聞き取りに加え、7人の教員を計9日間追跡し、日々の仕事や職場での人間関係を調べた。

研究が注目したのは、教員が「教職を辞める」ことと「別の学校へ移る」ことを分けて考える必要性である。

オーストラリアでは、教員不足を分析するとき、教職そのものから離れる人数や離職意向が注目されやすい。しかし、一人の教員が別の学校へ移れば、教員数全体は減らなくても、元の学校には欠員が生まれる。

研究対象となった学校では、この移動が繰り返されていた。

ある学校では、1年間で15人を新たに採用する必要があった。採用した教員が短期間で再び移動すると、学校は再度採用を行い、新任教員への導入研修やメンタリングを繰り返すことになる。

その負担を担うのは、学校に残っている教員や管理職である。

新任教員が増えれば、授業計画、学校独自の仕組み、生徒や地域の事情などを伝える必要がある。経験の浅い教員や暫定的な資格で働く教員の割合が増えれば、周囲の教員による支援も増える。

結果として、

教員が移る。
残った教員の負担が増える。
新しい教員を採用する。
研修や支援の負担が増える。
さらに教員が移る。

という循環が生まれると研究は指摘している。

背景には、学校間で教員を奪い合う状況もある。

オーストラリアでは、資格を持つ教員の不足によって授業の質が妨げられている学校で働く中等教員の割合が42%に達している。OECD平均は23%で、オーストラリアは2018年の14%から大きく上昇した。

こうした状況で学校ごとに採用を進めれば、ある学校が教員を確保する一方、別の学校では教員を失うことになる。

研究タイトルの「We’re cannibalising each other(互いに食い合っている)」は、研究に参加した教員自身の言葉である。

ただし、教員本人から見れば、学校を移ることは必ずしも教職から逃げることではない。

研究でも、特に困難を抱える学校から教員が移る背景について、生徒から離れたいからではなく、「そこで効果的に教えることを難しくする勤務条件」が関係しているという先行研究が整理されている。

ここは、教員本人の進路を考えるうえで重要な点となる。

教員を辞めたいのか。
今の学校から離れたいのか。
同じ教員でも別の環境なら続けたいのか。

この三つは同じではない。

教職を続けるか退職するかだけで考えれば、「異動する」「別の学校へ移る」という選択は見えにくい。

一方で、個々の教員にとって合理的な移動が繰り返されることで、残った教員の勤務環境が悪化し、次の移動を生む可能性もある。

今回の研究は、教員不足を単なる採用人数の問題ではなく、教員が「どの学校なら働き続けられるのか」という進路と勤務条件の問題として捉える必要性を示している。

出典
McPherson, A. & Lampert, J. “We’re cannibalising each other: a case study of teacher turnover in hard-to-staff schools”
The Australian Educational Researcher、2026年9月11日。

Springer Nature 原著論文

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