米オハイオ州立大学などの研究チームは2026年9月2日、教員が学校に残るか離れるかを考える際、管理職からの支援が重要である一方、児童生徒からの暴言・脅し・暴力が強い環境では、その効果だけでは離職意向を抑えきれないとする研究結果を公表した。研究は査読誌『Educational Researcher』に掲載されている。 Phys.org
分析対象は、米国の幼児教育から高校までの教員5,550人。2020~21年に実施された全国調査データを用い、管理職からの支援、学校で感じる安全性、不安やストレス、異動・退職意向、児童生徒から受ける被害との関係を調べた。 Phys.org
研究でいう「管理職の支援」は、単なる声かけではない。
生徒指導上の問題について校長へ安心して相談できること、問題が起きた際に管理職が教員を支えると信頼できること、学校運営に透明性や十分なコミュニケーションがあることなどを含む。
結果として、管理職からの支援が高いほど、教員は学校を安全だと感じ、不安やストレスが低く、異動・退職意向も低い傾向が確認された。つまり、管理職支援そのものには明確な意味がある。 パブリックナウ
一方で、今回の研究が示したのは「支援があればそれで十分」という結果ではなかった。
対象となった教員の44%が児童生徒から何らかの被害を受けたと回答しており、暴言や脅迫的な言動まで含めると、最大80%がそうした攻撃に直面していた。被害の程度が高くなるにつれて、管理職支援と定着意向との関係は弱まった。 Phys.org
特に、身体的暴力だけでなく、侮辱、暴言、脅し、差別的な発言などの非身体的攻撃が日常的に積み重なることも、教員の安全感や仕事継続の判断に影響する。
研究チームは、管理職が教員を支えることは必要だが、教員が継続的に被害を受けている場合には、それだけで離職を防ぐことは難しいと指摘している。学校全体での明確な生徒指導方針、暴力予防、保護者や地域を含めた支援体制など、組織的な対策が必要になるとしている。 Phys.org
この結果は、「なぜ教員が辞めるのか」を本人の耐性や意欲だけで説明できないことを示している。
教員本人の進路という視点では、「教員を続けたいか」だけではなく、「今の学校環境なら続けられるのか」という問いが重要になる。
管理職との関係を改善すれば続けられるのか。異動すれば状況が変わるのか。生徒・保護者対応そのものが負担の中心なのか。それとも教職全体から離れる必要があるのか。
同じ「辞めたい」という状態でも、原因によって選択肢は異なる。
学校内の支援で改善できる場合もあれば、配置転換や異動によって状況が変わる場合もある。逆に、安全が確保されない状態が継続するなら、本人が環境から離れることを含めた判断が必要になることもある。
今回の研究は、教員定着を「本人を励ますこと」や「管理職が支えること」だけに委ねず、教員が実際に安全に働ける条件そのものを見る必要性を示したものとなっている。
出典
Ohio State University(2026年9月2日) Phys.org
Perry, A. H. et al. “Necessary but Not Sufficient: School Administrator Support and Teacher Safety, Anxiety/Stress, Retention, and Victimization”『Educational Researcher』(2026年)

