ニュージーランド教育省は2026年9月2日、教員確保が難しい学校を対象とした「Teacher Bonding Scheme」の2026/27年度枠について、9月7日から申請を受け付けると発表した。
制度の目的は、単に新しい教員を採用することではない。教員をPriority Staffing Schoolsと呼ばれる人材確保が難しい学校へ呼び込み、そこで働き続けてもらうことまでを一つの政策として扱っている。2026/27年度は235枠が用意される。
対象となる教員には、5年間で最大4万NZドルが給与を通じて直接支給される。現在の為替水準では約350万円規模となる。
特徴的なのは、支給額が勤続年数に応じて増えていく設計だ。
1年間勤務すると5,000NZドル、2年目は6,500NZドル、3年目は8,000NZドル、4年目は9,500NZドル、5年目には1万1,000NZドルとなり、5年間の合計は4万NZドルになる。
つまり、「その学校に長く残る」という選択に対して、後半ほど大きな金銭的インセンティブを設定している。
対象も新任教員だけではない。
初任者、経験のある教員、海外で養成された教員のいずれも対象となり得る。対象校が制度対象となる求人を設定し、採用された教員が条件を満たせば参加できる。最低勤務量は0.3FTTE、雇用期間は最低12か月となっている。
今回の235枠は、当初の185枠から50枠拡大されたものだ。ニュージーランド政府は8月3日、教員養成と人材確保策に5年間で2,170万NZドルを投じる方針を発表し、その一環としてTeacher Bonding Schemeを拡大した。
この制度で注目されるのは、「教員不足」を入口の採用だけで処理していない点である。
従来型の採用支援なら、教員になった時点、あるいは不足地域へ移った時点で支援が終わることもある。
Teacher Bonding Schemeでは、1年間勤務しなければ最初の支給はなく、その後も同じ職に継続していることが次の支給条件となる。5年目の支給額が最も大きいことからも、制度そのものが定着を意識して設計されていることが分かる。
一方、教員本人から見ると、これは単なる「4万NZドルもらえる制度」ではない。
どの地域・学校で働くかという進路判断と、そこで何年間働くかという継続判断が結びつく制度である。
給与だけでなく、学校の環境、生活する地域、仕事内容、家族との生活、キャリア形成などを含め、「この条件なら5年間続けられるか」を考える必要が出てくる。
教員の定着政策では、本人に「続けてほしい」と求めるだけではなく、続けることにどのような条件や利益を用意するのかという視点が重要になる。
ニュージーランドの今回の制度は、教員不足を「何人採用したか」だけではなく、「採用した教員が、その学校で働き続ける選択をできるか」まで政策対象にした事例となっている。
出典
New Zealand Ministry of Education「Teacher Bonding Scheme」(2026年9月2日更新)
Education Workforce「Teacher Bonding Scheme ― teachers」(2026年9月2日更新)
New Zealand Government「School Onsite Training Programme to provide 704 places every year from 2028」(2026年8月3日)

