教員の負担を減らせば、学校に残る教員は増えるのか。
米国ミズーリ州の学校で広がる「週4日制」を分析した新しい研究が2026年9月9日、学術誌『Educational Evaluation and Policy Analysis』でオンライン公開された。研究対象となったミズーリ州では、2024~25年度までに559学区中178学区、約32%が週4日制を導入している。Sage Journals
週4日制はもともと経費削減策として導入された制度だが、近年は意味合いが変わっている。特に地方部では給与面で都市部の学校と競争しにくいため、「勤務日を減らすことで教員を採用し、辞めずに残ってもらう」という人材確保策として使われるようになった。研究者への聞き取りでも、学校管理職や教員は週4日制が採用や定着に有効だという認識を示していた。Sage Journals
しかし、実際の人事データを分析すると違う結果となった。

研究チームは2008~09年度から2023~24年度までのミズーリ州教育当局の教員個票データを使い、週4日制へ移行した学区と、まだ移行していない学区を比較した。その結果、週4日制によって教員の定着率が実質的に改善したという証拠は確認できなかった。推定値をそのまま解釈しても、離職減少は教員100人につき0.6人程度にとどまり、統計的にも有意ではなかった。Sage Journals
教員数そのものが増えた証拠もなかった。
一方で変化したのは、新しく採用される教員の構成だった。週4日制導入後は、ミズーリ州内ですでに教員経験を持つ人を採用する割合が高まった。特別支援教育では採用増加も確認された。つまり、勤務条件の変更には一部の教員を引きつける効果がある可能性はあるが、それがそのまま「教員が辞めなくなる」ことにはつながっていなかった。Sage Journals
ここで重要なのは、現場の実感と実際の定着データが一致していない点だ。
研究では36人の教育関係者への聞き取りも行われた。週4日制について、応募者が増えた、ワークライフバランスが改善した、仕事が楽しくなったといった肯定的な評価が多く確認された。それでも州全体の長期データでは、明確な定着効果を確認できなかった。研究者は、この認識と実証結果の隔たりを政策判断上の「情報問題」と位置付けている。Sage Journals
教員本人の進路という観点でも、この結果は単純ではない。
「週5日勤務がつらいなら週4日の学校へ移れば解決する」とは言えない一方、勤務日数、給与、学校規模、通勤、職場環境、担当領域など、働き続けられる条件を分けて考える必要性が見えてくる。
教員が仕事を続けられなくなったとき、選択肢は「今の学校に残る」「教員を辞める」の二つだけではない。同じ教職でも学校を変える、勤務条件を変える、担当を変えるという選択がある。
今回の研究が示したのは、勤務日を1日減らすという大きな制度変更だけでも、教員定着の問題全体は解決しなかったという事実である。
復職、継続、異動、勤務形態の変更、退職、転職を考える際にも、「教員を続けられるか」という一つの問いではなく、どの条件なら続けられるのかを分解する必要があることを示す研究となっている。
出典:Camp, A. M. et al., “The Effects of the Four-Day School Week on Teacher Recruitment and Retention,” Educational Evaluation and Policy Analysis, 2026年9月9日公開。Sage Journals

