米カリフォルニア州のVentura統一学区が9月18日、教員らに対して6%の賃上げを柱とする新たな待遇改善案を提示した。
対象は教員のほか、スクールカウンセラー、看護師、学校司書などの有資格職員である。2027年1月1日から給与を6%引き上げる案となっている。学区と教職員組合Ventura Unified Education Association(VUEA)は、待遇をめぐる交渉が行き詰まり、5月から第三者を介した調停に入っていた。9月4日の4回目の調停でも合意に至らなかったが、今回の新提案によって通常の交渉に戻ることになった。
今回の提案は、給与だけを引き上げるものではない。

健康保険について新たに6種類のプランを追加し、高額なプランを選ぶ場合は学区が費用の80%、職員が20%を負担する。一定条件の医療貯蓄口座には、学区から最大4,500ドルを拠出する仕組みも盛り込まれた。
学区によると、教職員の約半数は現在、年収10万ドル以上であり、6%の引き上げなら少なくとも年間6,000ドル以上の増額となる。一方で、同学区の教員給与はVentura郡内でも低い水準にあるとしている。
背景には健康保険費用の上昇もある。
学区が負担した健康・福利厚生費は2024~25年度の2,660万ドルから、2025~26年度には2,770万ドルへ増加した。給与と福利厚生費は同じ予算領域から支出されるため、医療費の増加が賃上げ余力を圧迫してきたというのが学区側の説明である。
さらに注目されるのが、この待遇改善を学区自身が「採用と定着」の問題として位置づけている点だ。
8月には、学区が所有する土地の売却代金の一部を現金ではなく完成住宅で受け取り、約50戸を教職員向け住宅として確保する計画も決定した。給与、医療費だけでなく、住宅費まで含めて教職員が地域で働き続けられる条件を整えようとしている。
今回の提案には退職に関する措置もある。
学区勤務10年超の教職員が2026年12月1日までに退職または辞職を申し出て、2026~27年度中に勤務を終える場合、退職日まで本人負担分の健康保険料を学区が負担する案が盛り込まれた。つまり今回の制度設計は「残る人」の待遇だけでなく、「離れる人」の条件にも関わっている。
教員本人の進路という観点では、ここが重要となる。
教員を続けるか辞めるかという判断は、仕事内容への適性だけで決まるものではない。給与、医療費、住宅費、退職時の条件などが変われば、「この条件なら続けられる」という判断も変わり得る。
一方、6%の賃上げ案はまだ確定していない。
これは学区側が9月18日に提示した提案であり、VUEAとの合意は成立していない。組合側の評価も現時点では確認できないため、「教員の待遇が6%改善した」と扱うことはできない。
今回の動きから見えるのは、教員定着を採用人数だけで考えるのではなく、すでに働いている教員が何を条件に残れるのかという問題である。
続けるか、条件改善を待つか、別の学区へ移るか、退職するか。
教員本人の進路判断では、「教員を続けたいか」だけでなく、「どの条件なら続けられるのか」も比較材料となる。
出典:Ventura Unified School District、2026年9月18日

