米国で、高校生が大学レベルの授業を先取りして履修する「デュアル・エンロールメント」をめぐる大規模研究が公表された。WestEdの研究チームがカリフォルニア州の高校生約174万人を分析したところ、大学科目に挑戦して単位を取得できなかった生徒でも、同程度の生徒で制度を利用しなかった場合より、その後に大学へ進学する割合が高いことが分かった。
デュアル・エンロールメントは、高校在学中に大学の授業を受け、合格すれば大学単位を取得できる制度だ。米国では利用が拡大しており、2023~24年度には約280万人の高校生が参加した。前年から12.7%増えている。
今回の研究では、2015~16年度から2018~19年度にカリフォルニア州の高校へ入学した約174万人のデータを分析した。
デュアル・エンロールメントを履修した生徒のうち、少なくとも1科目で不合格となった割合は17.1%だった。一方で、不合格になった生徒を詳しく見ると、経済的に不利な家庭の生徒、ヒスパニック系の生徒、男子などの割合が高かった。
特に注目されるのが「学力が高ければ失敗しにくい」という単純な構図ではなかった点だ。
数学成績が上位10%に入る生徒同士を比較しても、低所得層の生徒は、それ以外の生徒より不合格率が58%高かった。研究チームは、学力だけでは説明できない経済的負担、制度の分かりにくさ、相談相手の不足など、学習外の条件が関係している可能性を指摘している。
もちろん、不合格の影響がないわけではない。
デュアル・エンロールメントで不合格になると、合格した場合と比べ、その後18か月以内に大学へ進学する確率は約10~12ポイント低下した。失敗による影響自体は明確に存在する。
それでも、別の比較では重要な結果が出た。
同程度の条件にある生徒について、「大学科目に挑戦して不合格になった生徒」と「そもそも大学科目を履修しなかった生徒」を比較すると、前者の大学進学確率は約6.4ポイント高かった。
つまり、挑戦して失敗した経験そのものが、大学という環境を知る、学習水準を体験する、自分の現在地を確認するといった機会になっている可能性がある。
研究チームは、この結果を理由に参加条件を厳しくするのではなく、挑戦する生徒への支援を厚くする必要があるとしている。
実際、カリフォルニア州オークランドの事例では、各クラスに専任スタッフを配置し、大学教員と高校側の連携、生徒の進捗確認、個別支援などを行うことで、第一世代大学進学者や低所得層の生徒が多い環境でも平均83%の合格率を実現している。
進路を考える際、失敗を避けることだけが目的になると、本人が実際に試して判断する機会まで失われる場合がある。
今回の研究は、「正しい進路を最初から選ぶ」ことだけではなく、試す、結果を受け止める、必要な支援を加える、そのうえで次の選択をするという進路形成の一面を示す結果となっている。
出典
WestEd「The Arc of Dual Enrollment」(2026年)
Education Week(2026年8月25日)
WestEd Center for Economic Mobility(2026年)

