進路選択で重要なのは「親が決めること」ではなく、本人が自分の価値観を持てること ベルギーの377家族を追跡

高校卒業から高等教育へ移る時期に、親の関わり方が子どもの進路選択やアイデンティティ形成にどう影響するのかを調べた研究が、2026年7月20日に『Journal of Research on Adolescence』で公表された。

研究対象は、ベルギー・フランダース地方の高校最終学年に在籍する生徒とその家族377組。生徒の平均年齢は16.87歳で、母親と父親も含めた3者を複数時点で追跡している。

研究の中心にあるのが、「authentic inner compass」と呼ばれる考え方だ。

これは、自分にとって何が大切か、どんな価値観や目標を持っているかを、自分自身で理解している感覚を指す。単に「好きなものが分かる」という意味ではなく、周囲の期待ではなく、自分自身が納得して選択できる内的な基準に近い。

高校最終学年の時点で、この感覚が強い生徒ほど、自分が決めた進路への納得感が高く、進学先や学びの選択に対するコミットメントも強かった。一方、考え続けても決めきれない「反すう的な探索」は少ない傾向が確認された。

さらに研究では、親の関わり方にも注目している。

特に関連が確認されたのは、子ども自身が何を大切にしているのかを考えるよう促したり、親自身がなぜその価値を大切にしているのかを説明したりする関わりだった。

研究では、こうした「アイデンティティに特化した自律支援」が、子どもの内的な判断基準と正の関連を持ち、その後の進路選択やアイデンティティ形成にも間接的につながっていた。

興味深いのは、親自身が「支援している」と感じているかどうかよりも、子ども本人が「自分の考えを尊重されている」と感じている場合の方が、関連が強かった点だ。

つまり、親が情報を集め、選択肢を示し、助言すること自体が問題なのではない。

重要なのは、その関わりが子ども側から見て「自分で考えるための支援」になっているか、それとも「親の期待する方向へ導かれている」と感じるものになっているかである。

進路選択では、親が学校を調べる、費用を考える、経験の機会をつくるといった役割を担うことは少なくない。

一方で、どの選択肢を選ぶのか、なぜそれを選ぶのか、何を大切にしたいのかという部分まで親が決め続ければ、本人が自分の判断基準を作る機会は減る。

今回の研究は、親の関与を減らせばよいという話ではない。

支援をやめるのではなく、支援の中身を「答えを渡す」ことから「本人が自分の答えを作れるようにする」ことへ移していく必要性を示している。

教育投資や体験を増やしても、期待したほど主体性や進路意識が育っていないと感じる家庭では、「何を与えるか」だけでなく、「何を本人に考えさせ、どこから本人に任せているか」を見直す材料となる研究である。

出典
Houthuys, S. et al. “How autonomy-supportive parenting fosters adolescent identity across the transition to higher education: The role of an authentic inner compass”
Journal of Research on Adolescence、2026年7月20日

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